歴史エッセイ集「みちのく福袋」
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公開開始日:2011/02/26
最終更新日:2011/02/26 16:33

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歴史エッセイ集「みちのく福袋」 第3章 第3章・相馬黒光(こっこう)
 大隈と玄洋社の間には、ただ
ならぬ因縁がある。1889
(明治22)年、51歳の大隈は、
伊藤内閣の外相として不平等
条約改正にあたっていた。だが
その条約改正が国辱的であると
して、玄洋社社員・杉山茂丸に
爆弾を投げつけられ、右脚を
失うのである。杉山とは、作家・
夢野久作の父だった。

 頭山の玄洋社には、苦々しい
思いのある大隈だが、身は日本国
首相であり、日印協会会頭も兼ね
ていた。
「ボースの隠れ家は、大隈総理
の邸内か?」
という噂までささやかれていた。

 話は前後するが、11月28日
にイギリス大使が外務省を訪れ、
ボースら3人の印度人の身柄を
引き渡すよう要請してきた。彼ら
は敵国ドイツの援助を受けて、
インド独立運動を画策している
というのが理由だった。日本政府
としては、日英同盟の立場上3人
に国外退去命令を出さざるを
得なかった。
 ボースを匿っていた頭山とて、
国の決定に表立って逆らう事は
出来ない。さりとて欧州航路に
乗せれば、上海か香港あたりで
捕まってしまう可能性が高かった。
捕まれば殺される。義に生きる
頭山に、そんな事は出来なかった。
困った。どこかに隠れ家はない
ものか。

 そんな時、「そう言えば店の
裏のアトリエが空いている」と、
頭山に言った男がいる。新宿
中村屋の主人・相馬愛蔵である。
ボースら国際指名手配犯の身柄
をあずかり、事露見の暁には
その身は切腹、お家は断絶と
いう事態にもなりかねない。

「一商人といえど、相馬愛蔵・
男でござる」
と、仮名手本忠臣蔵十段目の
天河屋(あまかわや)義平の如き
セリフを言ったかどうか。
ともかくも愛蔵は、危険覚悟で、
ボースとグプタを匿う事にした。
頭山邸から新宿中村屋まで彼ら
を乗せた車を運転したのは、
大隈外相を襲った杉山茂丸。
日印爆弾男の奇縁だった。

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