歴史エッセイ集「みちのく福袋」
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公開開始日:2011/02/26
最終更新日:2011/02/26 16:33

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歴史エッセイ集「みちのく福袋」 第1章 第1章・古樹
  木ノ下の北隣のなだらかな岡が、
つつじが岡である。今は桜の名所
榴ヶ岡公園になっている。この地
はその昔、「鞭楯(むちたて)」と
呼ばれていた。源頼朝が奥州藤原
氏を討つべく19万の大軍で遠征
した際、藤原泰衡(やすひら)が
これを迎え撃つ為に陣を張った
場所である。

 泰衡は、先陣の国衡が敗れた
知らせを受けて平泉へ引き揚げ、
やがて泰衡も家臣の裏切りに
よって殺され、黄金の奥州藤原
王国は滅亡する事になる。

 木ノ下・榴ヶ岡から、宮城野原
を通って陸奥国府・多賀城政庁
(宮城県多賀城市)へと続く道は、
「奥大道」と呼ばれていた。この
道の途上に、一本のいちょうの木
がある。推定樹齢は、1200年
とも1300年とも言われている。

 1200~1300年前と
言えば、奈良時代の聖武天皇の
頃ではないか。その頃生まれた
樹が、今も現役で生きていると
いうのは、やはり驚きである。
誰が呼んだか「宮城野の乳銀杏」
銀杏町の名も、むろんこの樹に
由来している。
 乳銀杏は、高さ32メートル。
幹の太さはおよそ8メートル。
雌株である。宮城野の大地に
深々と根を張り、地の霊気を
吸い、神霊の風格を宿している。
黒々とした太い枝からは、牛の
乳房のような気根がいくつも
垂れ下がっている。秋になると
今でも、数多くのぎんなんを
実らせる。まさに「宮城野の
最長老・オババ」と言える。
 乳いちょうの前に立つと、
まずその神気(オーラ)に圧倒
される。

「うっ・・ん─・・すっ・・
すごいっ・・」

確かに圧倒されるが、威圧的な
霊気ではない。恐る恐る、畏敬
の念をこめて幹に触れてみる。
凝縮された1300年の時空が、
身体を貫く。ふっと全身の力が
抜け、広々とした青空のような
気持ちになってくる。これが
本当の、「自然の叡智」という
ものなのだろう。

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