歴史エッセイ集「みちのく福袋」
第2章 第2章・国見八景
「春高楼の花の宴 めぐる盃
影さして ちよ千代の松枝
わけい出でし むかしの光
いまいずこ/秋陣営の霜の色
鳴きゆく雁の数見せて 植る
つるぎに照りそいし むかし
の光 いまいずこ」
子規が「天然の溝渠」と
評した広瀬川の断崖。濃い杜
の緑。太平洋に昇る太陽と月。
国見の里には、漢詩的な詩魂が
ひっそりと息づいているの
かもしれない。
○第三景「龍雲寺」
酒飲みは甘いものが嫌いと
いうのは、世間の常識なの
だろうか。私は酒も甘味も
好きである。幼少時からの
甘味といえば「子平(しへい)
まんじゅう」だろう。茶の
薄皮と、まろやかな餡の味が
絶妙で美味い。
小中学校での祝い事や、
敬老的紅白まんじゅうも、
子平まんじゅうの味である。
まさに国見の里に根ざした
甘味なのである。店は子平町
にあるが、旧町名「伊勢堂下」
と呼ばれた頃から子平まん
じゅうだった。町名もまん
じゅうの名も、寛政の三奇人
と言われた林子平という人物
に由来している。墓所が町内
の、曹洞宗金台山龍雲寺に
あるからである。
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