アストラルの森2/聖人間工房
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発行者:オフィス亀松亭
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:アストラルの森2・聖人間工房

公開開始日:2011/02/26
最終更新日:2011/02/26 11:10

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アストラルの森2/聖人間工房 第2章 第2章・深層潮流
 遼介は別人の彼女に言った。

「はっ?・・あの・・」

遼介は満面の笑みを浮かべながら、彼女
に薔薇の花束を差し出した。彼女は新しい
手口のナンパかもしれないと思いつつ、
返事に困っていた。遼介の見た目は、
そう悪くなかった。だが彼女が迷う間も
なく、待ち合わせていた彼が現われた。

「人違いです。」

彼女はキッパリと言って花束を突き返し、
彼と共に駅方向に早足で歩いて行った。

 遼介は貧血を起こしたかのように、
その場に両膝をついて崩れ落ちた。
翔子本人に拒絶されたと思ったのである。
遼介の唯一の心の支えだった翔子という
存在を喪失したというショックは、
並大抵のものではなかった。それは
世界の終焉と同義だった。遼介の内部で、
暗黒の渦が急膨張していった。

 遼介は両手を地面に付き、ウゥゥゥゥ
と低く獣のような唸り声をたてた。全身
がブルブルと、小刻みに震えていた。
そして手に持っていた花束を、2度3度
と激しく地面に叩きつけた。薔薇の赤い
花びらが宙に舞い、かすみ草の白い粒々
が、風に流されて地面を這った。花束を
叩きつける動作によって、彼の脳裏に
バットを振り下ろした瞬間の記憶が、
フラッシュバックして蘇った。それは
例えようのない快感だった。

 遼介はキッと前方を見据えた。その目
には、狂気の情念の炎が鈍い光を放って
いた。彼はゆっくりと立ち上がり、花束
には目もくれずに歩き出した。公園に続く
細い道に入り、教会があるビルの入り口
付近まで来て立ち止まった。遼介は
ブリーフケースから刺身包丁を取り出し、
木製の鞘を取り去った。街灯の明かりに、
刀身がキラキラと反射した。

 遼介は電柱の下に立ち、刀身を鼻先まで
近づけて、舐めるように見つめていた。

「ムフフフフフ・・・」

薄気味悪い笑い声が、人通りのない道路の
薄闇の中に溶け込んだ。

「翔子は悪くない。悪いのは奴だ。奴に
そそのかされているのだ・・・」
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