アストラルの森2/聖人間工房
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発行者:オフィス亀松亭
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:アストラルの森2・聖人間工房

公開開始日:2011/02/26
最終更新日:2011/02/26 11:10

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アストラルの森2/聖人間工房 第2章 第2章・深層潮流
 通常、人は誰か異性の事を意識する
と、真っ先に心がけるのは自分自身の
身だしなみのはずだ。だがその常識は、
遼介には通用しなかった。翔子に出会い、
自動書記に至った前日から入浴はして
いなかった。服も着たままだったし、
髪の毛はボサボサだった。鬚も伸ばした
まま。歯も磨いていなかった。そんな
日常の事は、偉大なる革命精神から
すると、どうでもいい事らしかった。

 睡眠もほとんどとっていなかった。
というよりも神経が異常に昂ぶって、
横になって目を閉じても眠れなかった
のだ。食べる事だけはなんとかして
いた。コンビニでパンやレトルト食品
を買い、不規則に食べていた。その
せいか、頬がこけて頬骨がやや突き
出し、目の周囲が窪んで肌が黒ずみ、
中央の目だけが洞窟に潜む蛇のように、
ぬめっとした光を帯びていた。

 遼介は何かのアイディアや詩の
フレーズが頭に浮かぶと、決まって
ブルブルと手が震えた。腹の奥底が
カァーッと熱くなった。それは性衝動
にも似ていた。

「・・・おお民衆よ、歓喜せよ・・・
邪悪を破る勝利の日は近い・・・我は
今、目覚めたり・・・」
 遼介は浮かんだ言葉を、ボールペン
でレポート用紙に殴り書きした。時々
興奮のあまり、紙が破れる事もあった。
そしてそこに書かれた文字は、とて
も日本語として読めたものではなく、
右利きの人が酔っぱらって左手で書いた
アラビア文字のようであった。

 職場の上司が遼介の様子を見かねて、
彼に休暇を勧めた。遼介はその勧めに
従った。午後2時過ぎ、遼介はいったん
自宅に戻った。戻ると真っ先に、冷蔵庫
を開けてビールを飲んだ。酒屋に注文
して、冷蔵庫はビールでいっぱいに
なっていた。以前の彼はそれほど
アルコール類を口にする方ではなかった。
しかし自動書記以来、ベートーベンの
交響曲を聴いては感涙にむせび、シラー
の詩を知らないはずのドイツ語で口
ずさみ始め、何かにつけてビールを
飲んだ。

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