アストラルの森2/聖人間工房
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発行者:オフィス亀松亭
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ジャンル:ファンタジー
シリーズ:アストラルの森2・聖人間工房

公開開始日:2011/02/26
最終更新日:2011/02/26 11:10

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アストラルの森2/聖人間工房 第1章 第1章・妄想回路
 遼介はニヤニヤしながら、通行人たち
に余裕の表情を見せた。彼は自らの優越
を誇示するように、胸を張ってゆっくりと
歩いた。タクシー乗り場を過ぎ、翔子の
教会がある細道へさしかかった時、遼介
は出勤途中のホステスらしい女と衝突した。
遼介はよろけて、石垣に背中をついた。

「あら、お兄さん、ごめんなさい・・・
お怪我は?・・・ごめんなさい、私
ちょっと急いでいますから・・・」

 彼女はそう言うと、駅に向かって
小走りに駆けて行った。遼介はきつい香水
の香りにムッとして、軽い吐き気を憶えた。

「なんという無礼な女だ。あんな女たち
こそが、馬鹿な男たちをたぶらかし、
世の中腐敗させている元凶なのだ。私が
目覚めた以上、断じて許しはしない。
もっと取り締まりを強化して、明るい
健全な社会にしなければならない。」
 遼介が背中の泥を払い、一歩踏み
出した時、靴の裏にジャリッとした金属
のような感触を感じた。何だろうと思い
靴をどけてみると、土色の混じった銀色
の十字架だった。

「おお・・・こっ・・これは・・・」

 遼介は一瞬絶句した。彼はそれを拾い
上げると、スーツの裏地で擦り、泥を
落とした。

「これぞまさしく天恵。私の目覚めは
祝福されているのだ。」

 遼介はペンダントの十字架を、恭々しく
首に掛けた。何か目に見えない力に守護
されているという実感があった。それは
えも言われぬ感動に変わり、涙腺が緩んで
涙が頬にまで流れ落ちた。遼介は思わず
十字架を空に向けてかざした。

「こんばんは・・・」

 遼介が天に向かって祈っていた時、
ちょうど翔子が通りかかった。遼介は
翔子を確認すると、また感動で涙を流した。

「何という偶然・・・いや、全ては
エブラ様の引き合わせなのか・・・」

翔子は1人で感動している遼介を、
不思議な現象に出くわした時のような、
キョトンとした眼差しで見つめた。

 翔子は遼介のネクタイの上に、銀色の
十字架を見つけた。それは翔子にと
って、とても好ましい事だった。2人は
教会に向かって歩いた。歩きながら
遼介は、昨夜の詩について語った。

「エブラですか? さあ、私は知りません。」
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