ビター☆スマイル
第2章 春が来た
二葉は勝ち誇ったように寧々を見た。
しかし、寧々も負けてはいない。
「じゃ、私も」
「え?」
私もって、どういうことだ、私も、って!
二葉は眇めるような目になった。
斜視の気がある二葉のこの目に怯まないのは寧々くらいなものだろう。
しかし、寧々の言葉に撫子の顔がみるみる輝いた。
「え、寧々ちゃんも?」
文芸部といえば聞こえがいいが、実情はオタク趣味のアニメ同好会もどきだった。
撫子も入ってから驚いた。
入部と同時に退部しようと思ったが、幽霊部員で構わないと言われ、とりあえず籍を置いている。
「何言ってるの」
横から、また二葉が顔を出す。
「伊集院はピアノだろ? あ、バレエもあったっけ? 部活に現を抜かしている暇はなかったんじゃないの?」
「ピアノは水曜日だし、バレエは金曜日だもん」
「合気道はどうなのさ。父さんに伊集院がサボるって言っていいの?」
寧々はグッと唇を噛みしめる。すると、大粒の涙がほろりと落ちた。
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