イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ
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発行者:桜乃花
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2011/03/07
最終更新日:2014/09/10 23:00

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イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ 第1章 イルバシット
そばにいるのがトルカザであるのは一つの運命か。




「トルカザ、アルナスを助けて…」

彼が王子を術にかけなかったわけが分かる。

純粋さと、気高さと、賢さを、汚したくなかったのだ。


「トルカザ、彼はまだ許してくれない…でも、お前たちは負けないで、みんなが眠っていても、お前たちががんばるの…アルナスを助けてね。しばらくの間、二人で、この国を守りなさい」

「……?どうして?何を言っているの?」

「永くはかからないわ。……もしも、永く沈黙の日が続いても、必ず助けは来るわ。イルバシットから雪薔薇の戦士が来る。雪薔薇を照らす稲妻とともにね。彼らが来たら、私の墓碑を開けなさい」


キキは、話しながら、思うこととは反対の言葉を発していた。

沈黙の日は、彼を説得すれば、終わるはずなのに、私は何を言っているのだろう?

キキは、自身が自分の未来を見る力によって、傷つき、体力を失っている事に気づいていなかった。


家臣の裏切りの真相も、夫カザルスの家臣に対する仕打ちも、眠る度にキキの心を傷つけた。

そしていつしか、体はキキの自由に動かなくなっていた。


キキの心は、休息を求めていたのだ。







大切な事は、トルカザに伝えたつもりだが……。

私が彼を説得する手だてはなくなった。




私の様子に驚き、トルカザは泣きべそをかきながらアルナスを呼びに行った。

何とか声を出そうと努力したが、小指一つ動かす事は出来なかった。

知らない方が良いこと。

それはどんなときにもある。

バーナン家の当主が追放されたことも、その訳も、知らずに済ませたかった。

しかし、キキの頭の中には、すべてがはっきり見えてしまった。

すべてを見て、私の心は、眠りたがっている。


休みたがっているのだ。


こうしている間に、意識まで遠のいて来る。

これは、術ではないはず、あの石にも、期待したほどの力はなかった。

ならばどうして、こんなにはっきりとすべてが見えるのだろう?

キキは、穴に潜り冬眠する熊のように、心地よさに刃向かえなくなって来た。


トルカザが、アルナスを呼ぶ声が聞こえている。


私は、このまま命尽きるんだろうか?


キキの意識は薄れ、そのまま眠った。





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