イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ
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発行者:桜乃花
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2011/03/07
最終更新日:2014/09/10 23:00

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イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ 第1章 イルバシット
イルバシットの王子として生まれたものは、試練を乗り越えたすえ、国王となりこのサントルキシアで暮らしてきたのだ。










「こんなに高い山の上で、薔薇や百合の花が咲くなんて、どんな仕掛けがあるのだ?イサ、教えてはくれないか?」


「お教えいたしたいのですが、庭師にも良く分からぬ事らしいのです。言い換えれば、この三つの植物の他は、美しくは育たないと言うことらしい。塩の多い大地ですから」

「そうか、謎か…。マーキス様は、お元気か?ローダ様は?」

「はい、今いらっしゃいます。キキ様が連れていらっしゃいますよ」

「そうか。王子達が失礼をしたら、叱ってやってくれ。分からぬ子ではないから」

「叱らねばならぬ事など何も御座いません。仲良く遊んでいらっしゃいます。本当に、立派にお育ちになられましたね。知らせを頂きましてから、まだ五、六年ですのに」



近くで鳥達を眺めていた妻が、誰かに会釈をした。

白い正装のローダが庭の奥から歩いて来る。


「いらっしゃいましたね。王子様方を呼んで参ります」

イサは、音も立てずに消えて行った。


「良く来てくれた」

ローダ様の声だ。

私は微笑んだ。

「手紙は読んでくれたか、キキの事は心配いらない。この王宮で生まれた女の子には、特殊な力が有ることが良くあるのだ。キキには無いと思っていたが、人生の途中で目覚める事は珍しくない」

「はい。母が最近痩せたもので、それで連れて来る事を思いつきました。予言と関係あるのかと」

「何か心配事でも有るのかな。滞在のうちに聞いてみてやろう。王子も一緒だそうだな」

「はい。サントルキシアがあまりに美しいので、走り回っているところです」

「羨ましいよ。マーキスには、男子が出来なくて。息子の代で、ひとまずお役御免だ」

「姫君にお継がせになればよいのでは?」

「しきたりは、イルバシットを守るためにあるのだ。重い意味があるのだよ。守らなければ、小国は滅びるのみだ」

「イルバシットは滅びませんよ。ラスカニアがいる。守って見せます」

「頼もしい。私達も、エジプトからの風は、必ず止めて見せよう」

ローダは、若いアルカザの強い眼差しに、未来を見た気がした。







「マーキス。しばらくね」
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