イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ
イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ
アフィリエイトOK
発行者:桜乃花
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:恋愛

公開開始日:2011/03/07
最終更新日:2014/09/10 23:00

アフィリエイトする
マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ 第1章 イルバシット
彼の差し出した小さな包みには、なぜか見覚えがあった。

厚い絹で出来た化粧袋は、そうとう上質で、イルバシットでも高い地位の者しか持てない品物である。


手にとると、思い出した。

確かに、これは、私が選んだ品物ではないか。


開くまでもなく、私自身が職人に造らせた物だとわかった。

我が娘キキの為に。

中からは、女性用の美しいトルキが現れた。

確かに、これも、この小刀の持ち主からすれば、宝剣の一つだろう。


娘のトルキを捧げられたローダは、良い眠りの後のように、すっきりした気分だった。







「確かにこれは、本人にとっては宝物だな。良く気がついたものだ。開まで、私は、娘に授けたこの剣が宝剣だということを忘れていたよ。しかし、宮殿の奥に隠しておいた娘を良く見つけ出したものだな」

カザルスは、跪いたまま顔を上げた。

その剣は、昨日受け取った物ではなかったからだ。


カザルスは、まさかローダがすぐに結婚を承諾してくれるとは思っていなかった。

だから、一度ラスカニアに帰るつもりで、彼女の身代わりになる物をもらっておいたのだった。



この剣を差し出すのには勇気がいった。

この剣は、他国に渡れば、宝剣ではないからだ。

ただ、キキにとっては、命に代わるくらいの大切な品物なのである。

ここにある私の名前は、お父様が彫って下さったのと言って見せてくれた。



「…」


「どうした?カザルス・クス。皮肉ではないぞ。娘をどうやって探し出した?」

「ローダ様。私は、キキ様が今どこにお出でになるのか知りません。その剣は、私がラスカニアに戻っている間、彼女の身代わりになるものとして、貸していただいた物です。私は一度国に帰り、自身を磨き上げてから、もう一度、訪問するつもりだったのです」


それまで暗い顔だったローダは、頭を振りながら、やられたよ、と小さな声でつぶやいた。


「良くわかった。娘が君を望むなら、クス家に嫁がせよう。娘を連れて帰るがよい。お父上にも、朗報だと良いがな」


「本当に嬉ゅうございます。姫には、必ず良い治世をご覧に入れるとお約束致します。国に帰りましたら、父から、手紙を送る事に致しましょう。結婚のお許し、本当に、ありがとうございます」
63
最初 前へ 60616263646566 次へ 最後
ページへ 
TOP