イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ
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発行者:桜乃花
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2011/03/07
最終更新日:2014/09/10 23:00

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イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ 第1章 イルバシット
僕は、いつの間にか下を向いていた。

運命の友に嘘をついたままでいる、その苦しさから、微笑む事もうまく出来ない。






ネストを呼びたいが、なかなかこちらを向いてくれない。

様子がおかしい事と、関係があるんだろうか。

俺はネストの背中に浮かぶ悲しみを憂いながら、ひとりで返事をする事にした。

「鎧を貸してくれ。それから、剣の刃を潰すんだ。それなら、かすり傷ですむ」

「トルカザは納得しないだろう。そう思うが」

「ならば、このまま帰るだけだ。もともとお礼のつもりでやる気になったんだ」

アルナスは、微笑み、ずいぶん交渉がうまくなったな、といって頷いた。


6 隣国での出来事


アルナスが去ると、ため息が出た。

相手が王子だと分かると、やはり緊張するらしい。

俺は、煩わしい王族との付き合いや、上役との付き合いが苦手だ。

だからと言って、付き合いが下手だとは思わない。

ネストと比べたら、ずいぶん器用だと思う。

ネストは、人と交渉したり、駆け引きを楽しんだり、普通の若者が手を出したがるよ

うな事は、概ねよけて通るような奴だ。

それでも、真っ直ぐに生きて行けるのは、人並みはずれて賢く、美しい若者だからだ。

俺もネストも母親がカロシアの人で、肌の色が白い。

褐色の肌のイルバシット人の中にはいると、ひときわ白く見えた。

外見の特徴が似ていた事と、始めて競技会に出たとき、二回勝ち抜いたのが二人だけだった事から、俺とネストの付き合いは始まった。

武器が違うから、練習を二人でしたことはないけれど、気になる相手として、いつも目の端に存在していた。

長い付き合いだ。

何をしていても、ネストには気をくばり、彼の進歩に遅れをとらないように、頑張って来た。

俺にとっては大切な存在だ。

その彼が悩んでいるのが分かるのに、何も出来ない事が、少し寂しかった。

いつか、話してくれるさ、そう思って、今はそっとしておく事に決めた。

その晩かなり遅く、ネストは部屋に帰った。

俺はぐっすり眠っていたけれど、ネストの足音には気がついた。

ネストの足音は、少しだけかるくなったようだった。




翌朝目覚めると、俺の熱はずいぶん下がり、関節の痛みもなくなっていた。

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