イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ
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発行者:桜乃花
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2011/03/07
最終更新日:2014/09/10 23:00

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イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ 第1章 イルバシット
笑っている先生が、なんだかとても純粋で、俺は、もう話が出来なかった。

先生が俺を見ずに、外を見ながら話しているのをいいことに、俺はまた寝た振りをした。

先生は、私もスープをもらって眠る。

明日は、帰りたい時に帰っていいからな。

寝た振りの俺に話しかける。

本当は、もう、朱璃様とは別れたかったんだ。

先生は、最後にありがとうと言って部屋を出ていった。

俺は、固く目を閉じたまま、考えた。

自分も深く傷ついて、なかなか眠れなかった。

朱璃様には、セラ様がいるけど、先生はずっと独りだったんだ。

とても寂しい事だった。

出来る出来ないじゃなくて、先生はずっと耐えてきた。

先生は、心の中で泣きながら、頑張って来たんだ。

だからその努力は報われるべきだと思う。

そして、必ず幸せな暮らしを勝ち取って欲しいと思う。

俺は、無理やり眠るのを諦めて、仮眠所の壁にかけてある、剣を手に取った。

明るい月明かりの中、俺は、しばらく剣をふるう事にした。

こういう時、戦士を選んだ俺達のような若者は、汗をかきたがる。
そうすれば、気持ちが切り替わることがわかっているからだ。

汗と一緒に、しょっぱい涙が流れてきた。

先生への気持ちか、それとも安堵か。

かけ声を上げたら、先生に気を遣わせてしまう。

だから黙ったまま、辺りには、ただ風を切る剣の音だけが存在した。

息があがるほど、剣を振り回すと、俺の心は、やっと満足した。

夜風に汗が冷やされて、風邪をひいたらしい。

寒気がしてきた。

キサの顔が浮かぶ。

軽い口を叩きながら、体の小さい俺を心配するキサの顔だ。

怪我をしたうえに、熱を出したと言ったら、少しは怒るかな。

俺はとりあえず、寝台のシーツで体を拭き、それにくるまって、寝ることにした。

気持ちはすっかり晴れていた。

先生とも、キサや、道場の仲間達とも、これで繋がりがたたれる訳じゃないから。

俺は早く一人前になって、先生を助けられる人間になりたい。

それは、出来の良い兄さんを煙たく思ったり、英雄の一人である父親を怖れるのとは違って、自分の心の奥深くから湧いて来た確かな意志だった。

旅立ちが俺にもたらした事はいろいろだった。

良いことも、悪いことも。
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