イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ
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発行者:桜乃花
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2011/03/07
最終更新日:2014/09/10 23:00

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イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ 第1章 イルバシット
しかし、人の名前はだいたい分かってしまった。


俺は、先生と顔を合わせるのが辛くてたまらない。

逃げ出したい気分だ。

タンカミ先生の恋人は、王家の一つであるザード家の当主、セラ様のお妃様であるらしい。

命に関わるような秘密に思え、俺の腹は遠慮がちに鳴った。

気持ちを落ち着ける間もなく、スープの匂いが近づいて来た。

俺は、どんな顔をしていのかわからず、また眠ったふりをした。

「ジルザ、待たせてしまったな」

先生の声はいつもと違って、なんだか弱々しく聞こえた。

俺は出来るなら、このまま眠りたいと思った。



先生の気配が、悩んでいる様子を俺に伝えてくれた。

パンとスープを置いて、出て行ってくれないか。

俺はそう願ったが、その通りには行かなかった。


「ジルザ、聞いていたんだろう?君の影が見えたよ。隠しても仕方ないことだ。イナにいた時から、身分の違う相手だった。君の想像する通りだと思う。イナの言葉を使うのは、このあたりでは二人しかいないんだから。あの方は、セラ ザード様のお妃様、朱璃(しゅり)様だ」



先生の声は、聞いていられないほど、悲しみに満ちていた。

「ジルザ少し説明させてほしい。朱璃様に罪はないんだ。すぐに帰るべきだったのに、この国に留まった私が悪い」

先生は、ため息をついた。

そして、起き上がった俺の膝の上に、暖かいスープと、パンの乗ったお盆を乗せてくれた。

先生の目を覗きこむと、その輝きの強さに俺は少し安心した。

「遅くなったな、遠慮なく食えよ。君の義姉さんのスープだ。うまそうだな」

俺は、うまくは行かなかった運命の旅立ちを目の前にして、なぜだがそのすべてが分かった気がした。

先生は、こんな事望まなかった。

でも現実は。

恋人を見つける旅が戦士を幸せにするとは限らないんだ。

俺は、苛立ちを覚えた。

先生は、静かに話を進める。

「私は、朱璃様の父上から、渡してはならぬと命令を受けていた。たとえ相手を殺したとしても。ほとんど丸腰のセラ様。私の大剣。闘えば、セラ様の命はない。朱璃様は、私達を止めるしかなかったんだ」

先生は、俺の目をまっすぐ見ていた。

声が弱々しく聞こえたのはどうやら、先生が一人の人として話しているかららしい。

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