イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ
第1章 イルバシット
「シスを呼べ。すぐに解毒に長けた者を探させろ。それから、我が兄弟達も」
「陛下。シス様は、眠っています。どうしても助けたくて、私が眠らせました。妃殿下のお注ぎにになったニサ酒に」
「そうか。二人とも必ずたすける。戦いは中止だ。成果のあった者には、褒美を遣わす。皆でかかれ」
王の言葉に、兵士達は、素早く反応した。
サン家の血を引く者は多いが、王族席から遠く、しかも、継承権を放棄している者は、解決までの謹慎を言い渡され、そのまま帰された。
ミナさんと、ヤード氏もその中に入る。
その後多くは、属国であるアルカザンで見つかったが、女性や子供が多い。
従って、首謀者は、まだラスカニアにいることになる。
彼らは諦めてはいないのだ。
傷を負った俺達は、東の宮殿、つまり、アダン家に運ばれた。
牛の乳を搾る吸い出しで、レブの傷から血が吸い出され、一時的に、毒の広がりは、抑えられた。
しかし、俺の負った傷は思うより深く、腕の内側に向かって、毒が広がりはじめた。
そして、すでに右手は痺れ始め、皮膚に触れても、感覚がはっきりしなかった。
「これは植物毒だから、解熱剤も植物である可能性があるんです。とりあえず、いろいろ試してみましょう。お茶でも、時間稼ぎが出来るかもしれません」
「当てずっぽうでも、見つからないとも限らない。いろいろやって見よう」
俺達は、いくつもの薬草をお茶にしてもらい、試してみた。
しかし、毒は、少しずつ広がる。
夜が明け、シスが戻ったころには、俺達は、寝台から起き上がれなくなっていた。
「酷いわ、リヤド。二人に会わせてよ」
「いけません。まだ狙われているかも知れません。族がうろついている可能性があるんです」
「リリア。目鼻がついたら会わせてやる。それまでは、リヤドと一緒にいるんだ」
「お兄様。こんな事酷いわ。二人とも、毒に苦しんでいるのよ。せめて看病させて」
「サンの中にも味方はある。解毒は出来るはずだ。彼らの願いはお前が無事でいることだ。今は大人しくしていろ」
厩に潜む影に、シスは気づいてはいなかったが、王の遣わした兵士達に、堅く守られていた。
サン家の者のうち、多くは、この状況に驚いた。
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