イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ
第1章 イルバシット
正しい道はいつも、厳しくて辛いものだ。
それでも、それが成った時は、かえって揺るぎない物になる。
そうなるまで、頑張れるのかが鍵だ。
まずは、キキ様に強固な守りをつける。
そして、レブと話をする、敵に悟られないように。
レブは一番狙われ、疑いがかかる立場である。
しかし、私がうまくやれば、強力な切り札となる。
対戦の時が、唯一のチャンス。
レブは、私を殺せと命を受けているに違いない。
「今年の晩餐会は、アダン家の主催です。ゾルジ、あなたも出席なさい。そして、リリアとも、レブとも良くお話なさい。心置きなくね」
「ありがとうございます。競技会では勝ち抜けなかった。ですから、今年は、花嫁を連れて帰るのはあきらめます。でも、気持ちを伝える事は出来る。それは、ちゃんとするべきだと思います」
「どんな事でも、ライバルがいると言うのは、幸運なことなの。三人で楽しい話をね」
「ありがとうございます。私もそう思います。レブがいなければ、リリア姫への気持ちも、自覚出来なかった。競技会で頑張れたのも、彼のおかげです」
「ゾルジ、では、次は晩餐会でね。そろそろ戻りましょうか。今度は大剣の優勝者が決まるわね」
刺剣の試合が待ち遠しい。
今日でお別れだ、お優しいお兄様。
そして、貧国から来たお姫様。
カザルスだけは、殺したら怒られそうだからな…
「王妃キキ様。お話は尽きないでしょう?ゾルジをおそばにつけましょう。刺剣ではないが、自分の武器も持っているようだし、臨時の近衛です」
「あなたの父君を思い出すわ。その柔らかい対処の仕方。私の一番大切な家臣だった。今度はあなたがそうなってくれるのね」
「父のようになりたい。そう願います。きっと喜んでくださる。いつもそう思っています」
「ゾルジ、私の手をとって、ソナの後に続いて。今のイルバシットの話を聞かせて」
いきなり、キキ様の話し相手を命じられて、俺はかたくなった。
もっとかっこ良く決めたいけど、まだ子供なんだ。
リリアの方をチラッと見ると、シスの話を聞いて驚くリリアの顔が見えた。
俺と目が合うと、すぐにこりとしたけど、その微笑みがかえって不自然だ。
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