イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ
第1章 イルバシット
「そんな顔をしなくても私は大丈夫よ。心配なのは、あなただわ」
「俺の何が心配?俺はただ競技会に出場しただけだ」
「ご案内しても?そろそろお時間です」
「お願いするわ。それじゃ、謁見の間でね。謁見の間では、王妃キキ様と、あなたが主役よ」
「えっ?主役って…」
「では、参りましょう。こちらです」
「話したいことを話せばいいわ。私と話したように、マキやミナと話したように、落ち着いて。私も、兄もお供するわ」
「試合と同じくらい、緊張する。少し緑かかった、赤い髪の王女様だった。それ位しか分からないんだが」
「それで十分よ。あなたが話題を提供しなくても、王妃様はきっと黙ってはいないわ」
「じゃあ謁見させてもらうよ。本当に緊張する」
ソナさんに案内され、入った部屋には、玉座が置かれ、跪く為の敷物が敷かれていた。
あなたの思い通りにはならないって、リリアは言っていた。
素直に想像するなら、リリアに求婚したって言うことだ。
王女だって言うことにおそれをなして、求婚さえ出来ないなんて、なんて情けない奴なんだろうか。
俺は、跪いていることを良いことに、下を向いた。
「こちらで待っていて下さい。王妃様をお連れします」
ソナさんは、入って来たのとは反対側の扉から出て行った。
俺は跪いたまま、シスでもリリアでもいいから、誰か助けてくれと、願っていた。
「シス、あなたはどうやって勝ったの?最初は、少年の方が有利だったのに」
「はい、私は王子だと言って脅かしたのです。ひるんだ所を、攻めました」
「まぁ、あなたがそんな戦法を使うなんて、少し意外な気がするわ。でも、最後までねをあげずによく戦ったわ。去年は誰も参加者がいなくて寂しかった。あなたは、刺剣の使い手、西の門番、ゾルジ・バナーね」
「はい、王妃様。西の門番て、どうして、そんなことまで?」
「もちろん今年はどんな子供達がトルキをもらったのか、旅立ちが決まったら、名前と職場を教えてもらうのよ、弟にね」
「マーキス王から手紙が!」
「そうよ!マーキスがイルバシットの王で、私がラスカニアの王妃である限り、このやり取りは続くでしょうね!」
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