イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ
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発行者:桜乃花
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2011/03/07
最終更新日:2014/09/10 23:00

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イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ 第1章 イルバシット
誰かと一緒なら、危険度は下がる。



状況から考えて、暗殺者はひとりだ。


あくまで、人の目に触れることなく、闇の世界ですますつもりだ。



ならば、二人でいることで、守られるかも知れない。


でも、やっぱりリリアに話すべきか?





「兄様だけじゃなかったんだわ」


「…。」


「兄様が、自分の剣で怪我をするなんてあり得ない。わかるでしょ?」



「君は知ってたのか…。朝、シスと少し話した。その時、リリアが何をしたかったか分かったよ。君は、シスを守ってくれる人を探してるんだろ?」



「………」




「俺は出来る限りの事をすると約束した。今はそれしか言えないけど、なんとなく、ザイルさんの気持ちが分かって来たよ。俺は、離れて暮らす事が裏切りだとは思わない」


「嫌な国、でも大切な祖国だわ。協力してくれる人を待っていたの。あなたが倒した戦士は私の友達よ。王女の私と対等に訓練を重ねてくれた大切な人。彼女。兄様。リヤドが力を貸してくれるわ。そして私も、あなたに一生を捧げるわ。どうか力を貸して」


「ちょっと待ってよ。一生を捧げるなんて!そんなんで君と過ごしたって、幸せになんか思えない!君の家が大変なら、いくらでも力を貸す!イルバシットの戦士としてだ。交換条件なんかいらない」






「あなた、要するに私が嫌いなのね?それならもういいわ、あなたには何にもあげない。私の為に、死ぬ気で働きなさい!」


「なんで怒るの?俺は、その、交換条件みたいなことは、嫌いなだけだ!」



「なんでもいいわ!とにかく明日は優勝なさい!」


リリアは急に怒り出し、ゾルジを馬車から放り出し去ってしまった。




なんで?ゾルジには、リリアの怒りの意味が分からない。


間違った事は言ったつもりはないし、第一、リリアの為に、このまま残ろうかとさえ思っているのに。


しかし、肝心の頼みごとをするのを忘れてしまったではないか。



俺のするべき事は、あの声の主を探す事だ。


それしかない。


あの特徴のある冷たい声の主を。


勝利への執着は、もう消え失せていた。



そして、また考える。


恨みを捨て、冷静に。


シスばかりか、リリアまでねらうのは、なぜなのか。

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