イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ
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発行者:桜乃花
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2011/03/07
最終更新日:2014/09/10 23:00

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イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ 第1章 イルバシット
俺は、もう一度剣を振り回したい気持ちを殺して、部屋に帰った。



明日には、競技場の空気も、もっと熱くなる。


そんな想像をしながら微睡んだ。













「あんた何してるんだい。さっさと朝飯をすませな」



「…」


「時間に遅れたら、棄権と見なされちまう。そんなの、恥だろ?」


「競技会は明日からだろ?もちろん、練習はしたいけど…」



「何言ってるんだい。十時から、あんたの試合だよ!昨日紙渡したじゃないか!」


そんなの知らないよ!


言う前に飛び起きた。


一歩踏み出す頃には、正気。


それが戦士の宿命だ。



「起こしてくれてありがとう、マキさん。きっと勝って帰って来るからね」



俺は、ちゃんとお礼を言いながら、手拭きの布を、汲み置きの水で濡らした。



「着るものは指定のが有るらしいから、様子見て、適当でいいんだよ」


テラスに出ると、いつもの席は、俺の為に開いている。


俺は、暖かい物から、少しずつ口に運んだ。


焦ったり、緊張し過ぎたりしていたら、熱いものはうまく食べられない。


自分の落ち着き具合を見るのには、熱いものを食べるのが一番だ。


俺の口は、ちゃんと息でスープを冷ます事を忘れずに、無事に味わった。


鳥の骨の美味しい出汁の玉子スープ。


母さんのより少し味が濃いのは、俺が汗っかきなのを、気遣ってくれているからだろうか?









「案外落ち着いてるんだな」


ザイルさんの声だ。


俺は動揺を抑えきれずに、少しむせた。


「…」


「死んだ事になってるけど、母親には、会いに行った。キャラバンに紛れさせてもらって…。でも、いいことじゃないからな。イルバシットのなかじゃ、今も死人だ。父親の死に目にも母親の死に目にも会えなかった。今の暮らしは幸せだが、父さんや母さんが、幸せだったかどうかは、分からん」








「お前には…。勧めんよ」



だったら、出て来ないでくれよ。


俺はそんな思いで、彼を睨みつけた。


俺は明らかに動揺していたし、泣いていた。


出て来んなよ。


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