イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ
第1章 イルバシット
「隊長さんがミナさんの親戚?」
「そう。第一騎兵大隊の隊長さん。彼が対戦表を作るんだもの。ミナちゃんの従兄だから、内緒よ」
「ミナさんて面白い人ですよね、王様の親戚だなんて、変な冗談言って」
「あら、王様とは、また従兄になるのかな。ミナちゃんのおばあちゃんが前王のお姉さんなのよ」
俺は対戦表を眺めながら、なんだか慌てた。
王様のほんとに近い人と、あんなにしゃべったなんて。
「気にしなくていいのよ。今は、ただの歩兵部隊長夫人なんだから」
「そうなんだ。ヤードさんは歩兵部隊長…」
そりゃあ強いはずだ。
「じゃあ、まさかマキさんも?」
俺は冗談のつもりだ。
「あら、あたしだって、ずいぶんさかのぼれば、繋がってるはずよ。女の子は相手には王族を避けるから。昔はいろいろあったからしいからね」
穏やかじゃないけど、なんとなく、俺は口元が緩んでいるのを感じた。
だったら、リリアも同じじゃないかと思いついたからだ。
王族とつながっていない相手をえらぶために、俺にあんな事を言ったんだとしたら。
リリアは、意地悪でも、世間知らずでもない。
すべてを分かった、大人じゃないか。
もし、考えすぎでも、希望的観測でもなく、リリアが本気で、俺の伴侶になる道もあると考えてくれたのなら、俺は自分の力で、それを勝ち取るだけだ。
必ず勝って、晩餐会に行く。
「マキさん、レブって言うのは、どこに書いてある?」
「近衛隊のレブだね?あんたとは、山が違うから、準決勝まで当たらないみたいだねぇ」
「そうか、レブって強いのかな?」
「当たり前よ。シス様の一番弟子なんだから。それに、シス様の勧めで、新しい流派を興したんだっていう話だよ。うちの旦那の家は、ずっと商売専門だから、兵隊さんの位には疎いんだけどさ」
「そうなんだ。まぁ、勝たなきゃ、当たれないわけだよね。だったら勝つよ。彼から、やりたいって言われたからね。どうしたって、先に負けるわけにはいかないさ」
「夕飯はどうする?もうできてるよ。さっき水浴びしたんだろ?お湯あるのに」
「夏だし、水浴びで十分だよ。さっきね、ザイルさんに会ったんだ」
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