イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ
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発行者:桜乃花
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2011/03/07
最終更新日:2014/09/10 23:00

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イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ 第1章 イルバシット
「そうよ。うちの娘をさらいに来たの」


ミナさんの言葉は、半信半疑だけど、うちと言うのと娘と言うのは分かった。


うちの娘に会わせようと思って。


そんなとこだろう。



しかし、ちょっと違ったらしい。


門番の、本当の大男がなんだか興奮している。


何かをわめいたかと思うと、俺の申し込み書を丸めて、投げ捨てた。


ミナさんは慌ててそれを拾い上げ、声をあげて笑った。


そしてしわを伸ばした申し込み書をもう一度渡すと、何か言って、俺の方へ歩いて来た。


ミナさんは笑っているけれど、大男はまだ俺を睨んでいる。


俺はミナさんの顔を覗いて、成り行きを探ろうとしたが、俺に分かるわけもなかった。



「ミナさん、あの人になんて言ったの?なんだか怒ってたね」


「大した事じゃないわよ。あの門番は、私の夫。うちの娘をさらいに来たって言ったら、俺がぶちのめすっだって。興奮しちゃって。本当に親ばかなんだから。冗談よって言っておいたから、ぶちのめすって言うのはなしだと思うけど…」


「えっ?あの大男の奥さんなの?」


「気にしなくて大丈夫。優しい人よ」




俺は、もっとラスカニア語を勉強して来るべきだったと、少し後悔した。


花嫁を探す事も大事だけど、よその国の人々と触れ合うのも、とても大切だもの。


言葉がわかれば、エジト語が出来ない人とも、もっと交流が出来たのに。


ミナさんの旦那さんの本当の気持ちも、きっと分かったろうに。



俺は、考えながら歩き、ミナさんが曲がったことにも気づかず、あたふたとあたりを見回す事になった。


振り返ると、三人の女の子が、ひそひそ話をしながら、こっちを見ている。


思わず笑顔になった。


なんて可愛らしい子供達。


「お母さんは?」


なんとか思い出してそう聞いた。


女の子達は、笑い声を残し、返事をせずに逃げてしまった。


俺は、女の子達の後を追いかけ、ミナさんを探した。


通りを曲がるとすぐ、ミナさんが見えた。


俺は、からかわれた事に気づいたが、腹はたたなかった。


さっきミナさんの言った、親ばかと言う言葉の意味が、すっと分かった。


「振り返ったらいないから、びっくりした。可愛らしいお嬢さん達だね」

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