イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ
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発行者:桜乃花
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2011/03/07
最終更新日:2014/09/10 23:00

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イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ 第1章 イルバシット
俺は昼間まで眠った。


水桶の水で身支度を整えていると、腹が鳴る。


口をすすいだついでに、喉を潤した。


競技会に参加する。


そう決めた時から、俺の体はふわふわと震えていた。


運命の日、旅立ちを許されたあの日のようにである。


他国での競技会出場は、ゾルジにとっては、やはり、一大事。


答えのない問題を出された時みたいに、俺は落ち着かない。


情けないけど、やっぱり怖いのかな?


ゾラがいたなら、競技会まで剣を振り回して過ごすんだろうけど、一人では、緊張感を拭い去れないでいた。



はぁとため息をついた時、部屋の窓からマキさんの声がした。



「先生様、良く寝むったもんだね。さっさと起きて、朝飯を食べな!運が良きゃ、門番に会える」



俺の体は、門番と聞いて一気に目を覚ました。


そうだ、今日はやることがたくさんある。



「マキさん、ありがとう。門番は自分で見つけるよ。堅焼きパン以外の食事がとれるだけで、十分だ」


「今日はまた、遠慮深いんだね。キキ様がいらしてから、私らみたいな庶民でも、楽な暮らしが出来るようになった。イルバシットの子供は、私らにとっても、宝物だ」


「宝物か。キキ様は、素晴らしい架け橋となって下さってる。俺が競技会に出られるのだって、キキ様と、カザルス国王様のおかげだ」


「あんた、良く分かってるんだね。この国も、頑張るよ!もう争いは懲り懲りなんだ」


ゾルジは、黙って微笑んだ。


本当は、戦いで国力を高めて大きくなったくせにと思ったけど、それはマキさんのせいではない。

もしかしたら、国王のせいでもないかもしれない。


平和も、争いも、よくよく眺めたら、あんまり差はない。


塀の中の平和を守るために、戦わなくてはいけないなら、きっと俺は、外に出て戦うから。


誰かのために、きっと戦う。



その時には、相手の命を思いやる余裕はないはずだ。


兵士の少ないイルバシットは、建国の時から、戦わずして勝つ道を選んだ。




初代の王が選んだ土地は、厳しい環境の山上だったのだ。


活火山の、山頂付近にある、盆地で、自然の城壁に守られている。


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