イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ
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発行者:桜乃花
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2011/03/07
最終更新日:2014/09/10 23:00

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イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ 第1章 イルバシット
麓まで降りられれば、その辺りに深い森がある。

たいがい、初めての夜、少年達はこの森で過ごす。

緊張から解かれ、一気に疲れ果てるからだ。

バルサンとネストも同じだった。

おまけに、二人とも風邪をひき、熱がある。

しかし、二人は馬鹿みたいに歩き続けた。

月のある方向。

カルダゴの方に向かって。

もう口を利いてもいいのに、黙ったままだ。

月が頭の上を通り過ぎ、当たりが白みはじめる頃、二人は、ようやく、口を利いた。


「出たんだな。城壁の外に」

「あぁそうだね。ずいぶん歩いた。堅焼きパンでも食べようか。油も火打ち石もまだ十分ある」

二人は、大木の虚に布を打ちつけ、その中で火を興した。

持って来た小さな鍋で湯を沸かし、お茶を淹れた。

暖かいものを口にして、もう二人しかいないことに気づいたのだった。


「仲良くやろうな、ネスト。きっと、一月は、長いと思う」

なんだか弱気なバルサンの様子を、ネストは、もうからかう気になれなかった。

それは、彼の誠実さからにじみ出た、汗のような輝きを発していたからだ。

誠実な戦士、ともに困難に立ち向かうと決めた戦友。


大切な友に出会えて、僕は幸せだ。

きっと、君の好きになった女の子を連れて帰ろう。

ネストは、カップを持ったまま、いびきをかき始めたバルサンに、毛布をかけてやった。

眠る気にならなかったのは、自分達の後をついて来る足音に気がついたからだ。

それは、龍の喉を下っている時から感じていた。

洞窟の中に、誰かがいたのだ。

いつも、毎年そうなんだろうか。

トルキナスの戦士が、守っていてくれたのだろうか。

でも、今この虚の外にいるのは、敵なのか、味方なのか、分からない。

バルサンも自分も人に追われるようなことをした覚えなんかない。

聞いてみようかと思うまもなく、バルサンのやつ、眠ってしまったし。

バルサンの、幸福な不安とは別の、薄絹のような冷たい不安が、ネストを取り巻いた。

武器の携帯は許されない。

王から賜った、肉を切るための小刀があるだけだ。

せめて石斧でもいい、手の中にあったら安心出来るのに。

ネストは、布で覆った木の穴を睨みながら、じっと夜の明けるのを待った。


森の夜は、騒がしいものだ。
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