イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ
イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ
アフィリエイトOK
発行者:桜乃花
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:恋愛

公開開始日:2011/03/07
最終更新日:2014/09/10 23:00

アフィリエイトする
マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ 第1章 イルバシット
俺は、恥ずかしさに下を向いた。

エジト語を話す相手がいるのに、言葉も失い、情けない子供になって立ち尽くした。

「おい坊主、さっきの元気は何処へ行ったんだい?」

おばちゃんの言葉は、相変わらず分からない。

「マキの家は、宿屋なの。食事も出るわ。泊めてくれるって。でもその前に、このパンをお上がりなさい。山羊のミルクもね。あなたにと思って、買い物を放って買ったのよ」

娘は、紙にくるまれたパンと木の椀のミルクを差し出した。


そう言われると、なんだか少し腹が立つ。

俺はその子の顔をちらりと盗み見て、負けずにすむ答えを探した。


そして、赤い顔のまま、訳の分からない事を口走る。


本当の親切から差し出されたパンに、俺は仇をした。


「お恵みなんかいらないし、俺はただの旅人じゃない!両替場が開いてれば、金は沢山持ってるんだ」


女の子は、目を見開いて、にこりとすると、おばちゃんの店の台にパンとミルクを置き、スカートのポケットからラスカニアのお金を出した。


「そうね!この時間では両替場は開いてないわね!金をどれくらい?紅茶のスプーンに一杯だと、三千ラスだと聞いてるわ」



俺は面食らい、逃げ出したいと思ったが、おばちゃんは怖い顔のまま、俺の腕を離そうとしない。


そんなとき、俺は誰かの視線を感じた。

通りに止まった、立派な馬車からだ。


そこから、ラスカニアの騎士らしい青年が出てきた。


肩に紋章が入ってるから、貴族である事に間違いない。


ひょっとしたら、この子に用があるんだろうか。


「シス様だわ。リリア様、お兄様のお迎えですよ!」


おばちゃんは、うっとりした表情で何か言うと、今度は俺を、宿屋の中に押し込んだ。


「明日返してね!」

女の子は、小銭で丸めたお金を俺の方に投げつけると、騎士の方を振り返った。

騎士は、俺を睨みつけだが、何も言わず、町の方を指差す女の子の手を掴んで、馬車に乗せてしまった。


俺は、女の子の身の上を心配したが、馬車から顔を出した彼女は、笑顔だった。

そして俺と目が合うと、花嫁にしてね!とまた言ったのだ。


俺は馬鹿みたいに、馬車が走り去るのをただ見ていた。


あの子は誰なんだろう?

貴族の家の小間使いか?
141
最初 前へ 138139140141142143144 次へ 最後
ページへ 
ページの先頭へ