イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ
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発行者:桜乃花
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2011/03/07
最終更新日:2014/09/10 23:00

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イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ 第1章 イルバシット
気を静める為。


「そうかも知れない。曇りのない心にしか、星の声は届かないんだ。キキ様の声が聞こえなくなったのも、死を恐れる心が生まれたせいかも知れない」


心を静める。


そうだった。


鏡に映る己と対話する。

それが星読みの力を増幅させる方法だった。


俺は、手鏡を借りようと、近くで見守るアルナスの方に振り返った。

よろけながら歩き、やっとの事で跪いた俺は、自分で思うよりずっと、危ない状態だった。

自分では振り返ったつもりでも、体がよろけ、キキ様の寝台に手をついて支えなくてはならなかった。


右手に握っている御守りが、光を放つのを、見たと思う。

それと同時に、アビーの夫ラダンが、戦士の名前を刻んだトルキを見せに来る光景が頭に浮かんだ。

なんの痛みも、衝撃も無く、ただ頭の中に、いろいろな景色が浮かぶ。


力を得たんだとすぐに分かった。


ゆっくり辺りを見回すと、キキ様の手を握っている事に気がついた。


その手は、すでに暖かさを取り戻し、深い息づかいが聞こえていた。

キキ様は危機を脱したらしい。

俺は、自分の頭の中で、家族の幸せそうな顔を見せられて、元気を取り戻していた。




「クス家の皆さん、キキ様の近くに。深い呼吸がよみがえりました。多分今は普通にお休みになっていらっしゃるのでしょう。きっと目覚められると思います」

「本当か?妻は、目を覚ましてくれるのか?」


「はい、明日の朝には。ただし、少しの間お持ちになっていらした先を見る力は、もうお持ちではありません。ひょっとしたら、長く眠っていらした事も忘れておいでかもしれない。どうか、そう考えておいて下さい」


「そんな事、どうして分かる?お前は、星読みではないのだろう?」

「はい、私は星読みではありません。しかしキキ様をお救いしたい気持ちのままに、そのお力を、我が身の中に吸い取ったのです。ですから今は星読みなのかも知れません。一つ聞いて下さい。キキ様は、力を失い、今までの事を忘れたかも知れません」


「そうか。私の事まで、忘れてしまったろうか?…」


俺は答えられなかった。


俺の頭の中は、嵐のように景色が行き交い、自分のものではないもののようだった。


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