イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ
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発行者:桜乃花
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2011/03/07
最終更新日:2014/09/10 23:00

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イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ 第1章 イルバシット
トルカザは、剣を構えたまま、なかなか打ち込んで来なかった。


俺をじらすつもりだろう。

流石に隊長様と言うべきか、俺の性分は読まれているらしい。

先生の言葉を無駄にしたくはないが、追いつめられた感覚が俺の気持ちまで堅くし始めた。


今までに経験したことのないほどの劣勢感を味わっている。


諦めかけたとき、俺の頭にキキ様の事を言った時のトルカザの顔が浮かんだ。


キキ様の事が、トルカザの弱点なのかもしれない。

キキ様は生きている。

彼らはそう言っていたけれど、まさか本当にそうなんだろうか。

あの時のあの声は、まさか、キキ様の声なんだろうか。


私はここにいる。

あなたはイルバシットの星読みね!

私の力を受け取って!

そうすれば、私は目覚められる!


動揺するバルザンの心にまたあの声が染み込んだ。


これがキキ様本人の声か?


俺は、隙だらけの状態で、ぼぅっと突っ立っていた。


トルカザは、あきれはててしゃがみこみ、俺を眺めていた。


「バルザン、準備は出来たかい?そろそろ本気を出すよ」


「何をぬかしやがる!変わってるにもほどがあるぜ、この国はよ。さっきから、キキ様が俺を呼んでるんだ。その声がうるさくて、試合なんか出来るか!まずはキキ様に会わせろよ!」

俺は時間稼ぎのつもりで、確信の無いままそう口にした。


だが、俺の言葉は、意に反して効果があった。


トルカザは、隠そうとしているらしいが、顔色が変わった。

まさか本当に?


俺は自分で言っておきながら、手が震えていた。


もし本当にそうなら、ネストがもし、噂の旅立ちを迎えた王子だったら、俺は、花嫁を探すどころではない。


俺は、試合に勝ちたいばかりに、とんでもない領域に入り込んだのかもしれない。

後悔しても始まらないが、近くで聞いているネストの事が心配になった。


お前が王子だなんて信じたくない。


それじゃもう対等でいられない。


俺は、お前の口から聞くまで信じない。

短い時間の間に、考えは巡った。


トルカザが、俺の視野から一瞬消えて、そして再び現れたとき、トルカザの剣が目の前に迫った。


俺は、ほとんど勘だけで、その剣を振り払う。


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