イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ
イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ
アフィリエイトOK
発行者:桜乃花
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:恋愛

公開開始日:2011/03/07
最終更新日:2014/09/10 23:00

アフィリエイトする
マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ 第1章 イルバシット
「そんな事言っていいのか?この腰帯を見せたら、彼はどれほど驚くだろうね」

「僕の荷をあけたのか!そんなまねをして、君はそれでも王族か!」

「そうだよ、僕はこの国を、そしておばあ様を守れるなら、何でもするさ」


アルナスの手には、イルバシットの王族の印、白い腰帯が握られていた。


「彼は負ける。君もおとなしく負けるんだ。そして、おばあ様を助けてくれ。頼んだよ」


強気な言葉を吐くアルナスの目の中には、深い悲しみが宿っていて、ネストは、彼に怒りを持つ事が出来なかった。


「それを返してくれ。君は、どうしたいんだ?父君のご病気には同情するが、そんな事をしても、キキ様は喜ばないぞ」


アルナスは、若者らしく少し目を伏せた。


彼らにはいつも純粋なところがある。

だからこんな事を言われても、怒りが湧いてこないのだった。


「分かってくれないらしいな。ならば、我らの力で勝つまでだ」

アルナスは笑みを浮かべ、持っている剣で、鉄の格子を叩いた。


「トルカザ、もう遠慮はいらないぞ。好きにしていい」


不敵な言葉だった。


確かにトルカザはすばしこい。

しかし、バルザンがトルカザの間合いを見切れば、簡単に負ける事はない。


バルザンには、僕がついてる。


「バルザン、そんな奴に負けるな!」


ネストの叫び声が聞こえてきた。

アルナスの憎たらしい言葉が聞こえて来たときだ。


俺は、嫌な予感に包まれた。


冷静にならなければいけないときに、そんな言葉を吐くとは、ネストを苛立たせるような事があったのだ。


まさか、そう思った時、俺には隙が出来た。


せっかく、唯一勝てるかも知れない策を思いついたのに。


打ち込まれると思った時、トルカザの顔に笑みが浮かんだ。


「アルナスの言葉に気をとられたの?それとも友達の言葉にかな?僕はそんな隙につけ込まなくとも負けないよ」


トルカザは、一度剣を下ろして、また初めのように緩やかに構えた。

彼は、俺に対して、一つも脅威を感じていないのか…。

俺は怖れさえ感じるのに。


勝負はこれからだ。

そう思おうとしたが、肩の力を抜こうとしても、体は言うことをきかなかった。

後一太刀か、二太刀で勝負が決まる。

俺にはそんな予感がした。
107
最初 前へ 104105106107108109110 次へ 最後
ページへ 
TOP