イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ
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発行者:桜乃花
価格:章別決済
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2011/03/07
最終更新日:2014/09/10 23:00

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イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ 第1章 イルバシット
アルカザンは大切な隣国だ。

遺恨の残るような事はしたくない。


しかし、もし約束を違えるような事があったら、黙ってはいられない。


どうか無事に済んで欲しい。


俺は祈るような気持ちで、馬車を降りた。


この御主もただ者ではなく、落ち葉の上を歩いても足音がしない。


そして俺達は、城の主の居室の目の前に馬車を止めている。

こんな失礼な馬車の止め方は見たことがなく、俺達は顔を見合わせた。


王の部屋の窓は、ほとんど馬車で塞がれていた。



「こんな止め方したことないな」

俺は、黙っていられなくなり、ネストにそう言った。


「あぁ、どうかしてる。やっぱり何かあるのさ、気を抜いた方が負けだ」


俺達は、二人とも、何かを諦めた。

諦めたと言うのは違うだろうか?


何かが確実に近づいた事を感じたのだ。


シーナにはもう会えない。

そう思うと、俺の体から力が抜けた。


「待っていたよ!お父様はこっちだ」

内側から扉が開いて、アルナスが出て来た。

彼はもう鎧をつけ、剣を振るったのか、汗もかいている。




「お父様は、君達が来てくれたことをとても喜んでいるよ。少し話をするだろ」

「もちろんだ。アルカザンとイルバシットの絆となった方だ。是非挨拶させてくれ」

ネストは落ち着き払い、そう言った。

はったりだと分かっていたが、ネストは自分より目上の人間に対して、話をするのがうまいのだ。


相手が国王だとしても、ネストは焦ったり、自分を見失ったりしない。

堂々としたものだ。

リス家がシエラ家の料理人だからなのか?

それならビダ家だって、王家の星読みだ。

俺だって、お忍びで出かけている国王に会った事はある。

しかし、俺の心臓は、恥ずかしながら、王と聞いただけで高鳴り、収まらない。

ネストが何気なく口を挟むのは、俺を助けるため。


俺達は、息づかいだけで、互いの感じている事を察する事が出来るのだ。


この旅に出るまで、意識した事はなかったが、俺達は、思うよりずっと強い絆で結ばれている。


一瞬胸に刺さった棘の痛さをおもいだしたが、ネストの背中の意外な頼りなさを見ているうちに、癒えて行く気がした。
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