イルバシット 戦士と花嫁 約束の大地へ
第1章 イルバシット
1 王家の庭
俺も、友達のキサも、今年十五になる。
旅立ちの夏だから、なんだか二人とも落ち着かない。
旅を済ませた先輩達は、何事もなかったように平和に暮らしているから、べつに、大したことじゃないさと言う気持ちもあるけれど。
そう思おうとしても、いつしか、心臓がゴトゴト音を立てている。
そんな日がここ何日か続いて、俺は少し疲れていた。
もうすぐ友達のキサが、交代に現れるはず。
そうしたら、儀姉さんの暖かいスープを飲んで、さっさと寝て仕舞おう。
柄にもなく俺はそんな、弱気な事を考えていた。
「ジルザ、何を考えているの?」
突然後ろから、可愛らしい声が聞こえて来る。
あろうことか、第二王女メリナ様の声だ。
なんと言うことか、とんでもない失態じゃないか!
俺は、仕方なく、メリナ様の前に跪き、誰かが罰を言い渡すのを待った。
向こうから北門を守る兄、ラザの笑う声が聞こえて来る。
すでに交代していたらしい。
こんな失態を見られるなんて、無性に腹が立つ。
俺は情けない格好で、ただその場にへたばり、誰かが現れるのを待つ。
王妃さまだったら、なんとか許してくれそうな気がした。
まさか、旅を中止にするなんて言わないよな?
兄貴なら、慌てやしいんだろうけど。
俺の気持ちはあくまで後ろ向きだ。
そんな俺の背中は、やがて王の声を聞いた。
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