敦子 第一話 ~大っきらいな敦子へ~
第1章 気が進まないこと
僕は敦子(あつこ)がきらいだ。大っきらいだ。
もう三回もクラス替えがあったのに、なぜか僕と敦子はずっと同じクラスだ。一年生のときからずっと。
この春のクラス替えじゃ、そろそろ違うクラスになれるんじゃないかと思ってたのに。これで今年と来年……つまり六年間、敦子と同じクラスが確定だ。
去年の三学期なんか席が隣り合わせ。もちろん同じ班。最悪だった。班長は僕に押しつけたくせに、実際に仕切るのは敦子なんだ。給食の時間には僕のおかずを勝手に取るし、人がせっかくなんとかごまかそうとしてるのに、わざわざ「先生、和矢(かずや)くんが教科書忘れてます」って言いつけてくれるし。水泳の時なんか、水の中にひっぱりこまれてマジでおぼれそうになった。
僕は跳び箱四段も跳べないけど、敦子は六段を余裕で跳ぶ。僕は泳げないけど、敦子は泳げる。僕は敦子には全然かなわない。勉強でも、運動でも。だから、僕のことなんかほっといてくれればいいのに。なんでちょっかい出してくるんだ。
僕が一番いやなのは、なにかにつけて「男でしょ、しっかりしなさい!」って言いやがること。
ガマンできなくなって、本気でケンカしたこともある。敦子がまったく遠慮なしで僕をべちべちとブッたたくから、僕もやりかえした。僕の方がいっぱいたたかれた。でも、結局僕が悪いことにされてしまった。女って、ずるい。
敦子なんかきらいだ。いなくなっちゃえばいいのに。
もうすぐ夏休み。夏休みになれば、当然敦子の顔も見なくてすむ。そんなことを考えながら教室の掃除を終わらせて帰ろうとすると、その敦子が僕の前に立ちはだかった。
「ちょっとあたしの家まで来てくれない? 大事な用があるのよ」
1