ブロークン・スプリング
ブロークン・スプリング

発行者:てきーら
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2010/12/23
最終更新日:2010/12/22 22:44

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ブロークン・スプリング 第1章 誘惑
早次郎が別れ際に吐き捨てていった言葉。身も心も汚れ果てたわたしにはなぜか頼もしくも聞こえたのであった。
半年前、中学まで同じクラスメートだった俊也と何とはなしに偶然出会う機会があり、由希は彼の下へゆくことになったのであった。
特別、青春時代彼女は俊也のことは気にもせずに過ごしてきた。箱入り娘のように育てられた彼女は、男女間の恋というものに敏感なほうではなかったのかもしれない。世間からは華やかに見られているであろう私立の女子高に入学してからは、吹奏楽部に入り、陽が落ちる頃までトランペットとともに汗を流す毎日であった。
(「一緒に帰ろうよ、由希」
「わたし、ここのパートもう少し練習してから帰る」
「え~、じゃあ、あたしも残ろうかな」)
それでも過ぎ去った日々は充実していた。そして、月日はいつの間にか由希をしとやかな女子大生へと連れていった。ここでも周りは同性の女の子ばかりであったが、もうすでに高校時代から慣れっこであって特別気にも留めなかった。
あれこれ整理している段ボールの中からその時の写真が数枚ふいに転げ落ちてきた。由希はそれを空ろは眼で少しの間じっと見つめた。
「どうして私は今、こんなところにいるんだろう。こんなにあくせくと荷物を整理したりしているんだろう。何があってあんなチンピラの男なんかと絡むハメになってしまったんだろう」
部屋の薄暗い電灯の中で、彼女は写真の中の、今のどん底に近い境遇とは正反対にいるもう一人の自分を悲しげに見つめる。
「悔しい……」
由希は小さな溜息に混じって顔をさらにうつむけた。自然とあの頃の追憶が泪とともに込み上げてくる。
(「由希、明日の土曜部活休みだしどっか遊びに行かない?」
「うん、いいよ。どこ行こうか」
「ショッピングした後、ご飯食べに行こうよ。美味しい店知ってるんだ、わたし」
「うん、いいね。そうしよう」)
無邪気にただただ毎日が訳もなく楽しくて、友達と微笑(えみ)を交わし合った高校生というまだ“幼き”頃の自分。途中の旋律(メロディ)でどうしてもつまずいて、ムキになりながらも何回もトランペットを弾いていたあの“幼き”表情。
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