浪人生
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発行者:てきーら
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ジャンル:その他

公開開始日:2010/12/17
最終更新日:2010/12/17 22:32

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浪人生 第1章 ネオン街の憂鬱
そんななか、相変わらず山原は虚しい気持ちに浸かっていた。まるで、街の無数の光り輝くネオンだけが彼を慰めてくれようとしているかのように四方八方からぎらついていた。
(友達はあんな成績で受かったのになぜ俺は落ちたんだ…)
駅には向かわず街の中を一人虚ろな表情して歩いている彼に、昨年の悔しく苦い思い出が脳裏にふいと湧き起こってくる。そしてその遣る瀬ない思いが彼の頭の内に潜み続ける。
「よっ、山原じゃねぇの」
思わず聞き覚えのある声に山原は後ろを振り向くと、それは高校時代の同級生で同じクラスだった高谷であった。高谷はこれから、大学の講義が終わってかつて同じクラスだった大学に通っている友人と飲みに行くのだという。うつむき加減で暗い表情をしている山原に彼は、
「よかったらお前も今度うちらのタメと飲まない?」
と誘ってきた。
「う、うん……いや俺はいいよ……。まだ大学だって受かってないしさ……」
だが、軽く首を振って躊躇する山原に、高谷は彼の肩をポンと叩き、
「そんなこと気にすんなよ。あのさ、受かった自分が言うのもなんだけど、大学なんてつまんないぜ。みんなほとんどの奴等は勉強なんかする気ないし、ただ皆が入るからオレも入ったよって感じでさ。俺もそこら辺歩いている奴等と一緒だよ。サークルも入ったけど、あんま金が無くて最近出向いてないし…」
茫然とした表情で、幾分口もぽっかりあけた山原に、彼はいったん開いた口を止めずに、
「だからさぁ、山原。お前も真剣に勉強する気がないんだったら、大学なんざ行くの止めとけ、後悔するよ。退屈なだらだらとした味気ない日常にさ。毎朝講義に行かず、そのまま家からパチンコに直行しちゃうヤツも少なくないしよ」
街の無数のネオンの無機質な灯{あかり}が高谷の顔をも染めている。山原の現状{イマ}を心配するかのように、高谷の喋る声はやや震え、目には涙も含んでいるような気がした。その澄んだ眼がネオンによって余計に、彼の今、山原に伝えたい気持ちを訴えかけているみたいであった。
「じゃあ、俺はもう行くよ。ヒロとマコト待ってるしさ」
そう、さっと言い残すと高谷は、人ごみで溢れかえる街の中を勢いよく駆け出していった。
山原は、若者等で賑わう街の中で一時茫然と立ち止まったが、再びトボトボとうつむき加減で歩き始めた。
相変わらず、眼の前を空虚な面持ちで、溜息を時々つきながら…
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