浪人生
浪人生

発行者:てきーら
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:その他

公開開始日:2010/12/17
最終更新日:2010/12/17 22:32

マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
浪人生 第1章 ネオン街の憂鬱
山原は現役で国立一校と私立三校を受けたがみな落ち、今は都内の某大手予備校に通っている。当初は“来年こそは受かって見せるぞ”と意気込んでいたが、模擬試験を重ねるにつれ、その勢いは徐々に衰えていった。思うように成績は芳しくなく、次第に何のために「勉強」というものをしているのか、山原自身頭の中に疑問符が付いて離れない時間も増えてきた。最近では日々の退屈な予備校が終わった後、ゲーセンやネットカフェに行き来する始末である。
(このままこんな気だるい時間{とき}がまだまだ続いてしまうのだろうか)
ねずみ色や紺色のスーツを身に纏って、多種多様な人込みで溢れる街中を義務的に歩いているサラリーマン達の背後を空虚な面持ちでとぼとぼと、ややうつむき加減で歩いていた。既に街中は夕靄のベールが濃くなりつつあった。街の中央で人込みを見下ろしている駅前の巨大スクリーンでは、昼間と変わりなく現在{いま}流行りのアーティストの音楽を流し続けている。そんな歌など山原には興味はない。スクリーンから流れてくる聴き飽きた音を耳にすると、なぜだかわからないが苛立ちさえ込みあげてくる。
(何のために俺は勉強なんてつまらない事を毎日しようとしているのだろう)
無数の多彩な老若男女の人だかりがスクランブル交差点で立ち止まっている。山原は相変わらず空虚な思いで、この夕靄と同じく先の見えないどうしようもない気分に浸っていた。街を鮮やかに飾る数え切れないくらいのネオンが山原の表情{かお}にも染まる。四方の信号は青に変わり、不特定多数の老若男女の群れはぞろぞろと一足一足スクランブル交差点を占拠するかのように横切っていった。夕靄はやがて闇が支配していく夜の光景へと移り変わる。
茶髪にピアスの今となっては若者のスタイルと化した男女のかたまりが、ネオンに彩られた暗闇の空間をダラダラとどこか彷徨っているかのように街中へ、また駅へと歩いている。その中には腕に洒落たタトゥーを入れたり、眼のところにアイシャドーを施したりしている女のコもいる。それ以外にも会社帰りのサラリーマン達やOLで、都会の大きなこの街は賑わっている。所々でキャッチセールスの頭を金髪に染めたケバケバしい男や女が、路ゆく通行人を呼び止めては身振り手振りで何か話し掛けている。
2
最初 前へ 123 次へ 最後
ページへ 
ページの先頭へ