飼い主募集します!
第10章 バーベキュー!
「余り生の肉をおいそれと口へ放るな、章太郎、細菌でも入っていたらどうするつもりだ」
そう言いながら姉貴は安い方の肉を両面良く焼くと皿へと移して泪乃へと渡す。
泪乃は慣れたもので器用に箸で肉を掴むと心底幸せそうな笑顔で肉を頬張った。
「ううー、ぴーまんかー、これがぴーまんなのかー」
田辺はピーマンの肉詰めと睨めっこしながらそうブツブツと
呟きながら口元まで運んでいっては元の位置に戻し、また口元まで運ぶ、を何度も繰り返している。
何度目か口元へ運んだ時、田辺の後ろからひとみが急に両手でパンッ!と手を叩いた。
「ひゃぁっ!?」
吃驚した勢いでそのまま田辺の口の中へと消えていくピーマンの肉詰め。
もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ…
最初は驚いていた田辺だが咀嚼を繰り返すうちにその顔は段々と恍惚な物へと変貌していった。
「う、うまー、ぴーまん!ってかにく!うまーっ!!」
「ふふふ、ですです、コウちゃんは今、大人への階段を一歩昇ったのです」
「うまいなー、こうはぴーまんがこんなうまいものだとはしらなかったぞー!!」
余程気に入ったのか田辺は口の中へと次々にピーマンの肉詰めを放り込む。
俺もそんなに美味いのかと一口食べてみた。
いや…田辺、多分これはピーマンが美味いのでは無く、
明らかに肉の甘味が強すぎてピーマンの味が全く感じないだけだぞ…
しかし、これ、本当に肉なのか?
舌の上で融ける肉はテレビの中の空想の産物だと思っていたがやはり実在したのか…
冠凪家、恐るべし…
合宿4日目、5日目も俺たちは楽しく過ごした。
もうここが自宅でいいんじゃないかと思ってしまえるくらいに
そこは楽園であり、こんな後輩を持てた俺たちは心底そこに感謝するべきだとつくづく思ったね。
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