飼い主募集します!
第1章 捨て犬拾いました
「今朝話していた警察は駄目だな」
「何でだよ?」
「こんな不思議生命体を世間に公表してみろ、
良くて動物園で一生見世物、悪くて生きたまま解剖だ」
姉貴に言われて檻の中でくんくん鳴いてるところと
泣き叫びながら解剖されてるところが素で想像できた。
…まぁ、正直あまり良い気持ちはしないな。
「…じゃあ、どうすんだよ?」
「ここで飼うしかあるまい」
「はぁ?ここって部室でか!?」
心底驚いてる俺を無視して姉貴は話を進める。
「そうだな、まず名前が必要だな」
「無視かよっ!?」
「おい、バカ、しっくりくる名前をつけてやれ」
「そして無茶振りかよっ!?」
「何だ、ペットの名前の一つも考えられんのか、文芸部員の名前が泣くぞ」
姉貴は仰々しく両手をやれやれと言った感じに上げると
「まぁ、バカには少々荷が重かったか、すまないな、
お前の頭の中身が非常にお粗末なのを思慮に入れるのを忘れていた、
いや、お前は悪くない。むしろこんな単純な問題も出来ないお前を指名した私が悪いんだ」
こいつ…一発殴ってやろうか。
というか名前くらい考えられるぞ、バカにすんなよ。
「名前だろ?いいよ、考えてやるよ」
俺は弾みでそう言うと姉貴がそこでほくそ笑んだ。
しまった…計算づくか、この女。
「よし、この犬の名前を決める大任を任せるぞ」
「…わかったよ」
俺は溜め息をつくと椅子に座りじっと女の子を見る。
ふむ…どう見ても女の子だ。
流石にポチやコロなんて名前をつけたら俺が姉貴にぶっ殺されてしまうだろう。
………………
「おい、バカ、まだ決まらんのか」
「五月蝿い、今考え中だ」
姉貴は部長机に肘をつきながらジト目でこちらを見ている。
「うん、そうだな、泪乃(るいの)ってのはどうだ、泪と雨をかけてみたんだが…」
「何故雨だ?」
「そりゃ雨の日に拾ったからだ」
「…単細胞」
ぼそっと酷いことを言ったぞ、今。
6