飼い主募集します!
第7章 夏休み突入!in合宿
「ってかマジ広いな…」
「うむ、とても車内とは思えん…」
「泪乃ちゃんのためにこんなものも用意したんですっ」
そう言うとこれまた恐ろしく高そうな生ハムを取り出すひとみ。
「そ、そんな物を与えるなっ!」
姉貴が慌てて止めに入った。
「え~?なんでです?美味しいんですよ、これ」
「だからだっ、私たちよりも高級な物を与えてどうする、
私は飼い犬の為に水商売で体を売って餌代にするなど死んでも嫌だぞ!」
姉貴は割りと本気で言ってる。
まぁ、あまり飼い犬に贅沢はさせるなって聞いたことあるし、
(前にテレビかなんかでおやつにメロンをやってるって飼い主が
居たがあれこそ本物のバカだと俺は思う)
ここは姉貴の意見に同意せざるを得ない。
ひとみはせっかく用意したのに…とぶつくさ文句を言っていたが
「じゃ、あたしたちで食べますか?」
と言って数メートル先にあるテーブルの上に生ハムを乗っける
「これ、切っておいて下さい」
とひとみが言うと小さな声でカーテンの向こうから
「畏まりました、お嬢様」
と聞こえテーブルが自動で動き出して生ハムがカーテンの向こうに送られていった。
というか車の中なのに移動するのに歩くっておかしくないか?
これは俺がおかしいのか?ひとみの家がおかしいのか?
「ところでド変態、別荘とやらには何時頃着くんだ?」
「5時間もあれば着くと思います」
5…5時間…?何県にあるんだよ?
「ふふふ、先輩、それは乙女の秘密なのです」
そう言ってひとみは悪戯っぽく笑った。
俺たちは出された生ハムをこんな美味い物が世の中にあったのかと
いう感想を抱きつつ貧困の差を憂いて雑談やらゲームやらしながら片道5時間、
リムジンに揺られ続けてひとみの別荘へとやってきた。
「到着しました、ここなのです」
そうひとみが言うとリムジンのドアが自動で開いた。
それは別荘というよりももう屋敷であって、
ちょっともう素で若干引いてしまうぐらい馬鹿でかい建物だった。
「何だかゾンビでも出そうな屋敷だな」
姉貴の言葉に俺はああ、そんなホラーゲームあったなとかどうでもいい感想を持ったが黙ってた。
確か「ゾンビハザード」とか言う人気ゲームだ。
第一作目の舞台が不気味な洋館だったか。
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