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第5章 文芸部の常識人
「………ほぉ、わかったぞ、お前らこれはドッキリだな?
お誂え向きにこんなコスプレ女まで用意して風邪だった俺をみんなで嵌めようと言うのだろう?」
「相変わらず頑固だな、貴様は」
「お前ほどでは無いけどな」
姉貴は無言で章太郎の手を取り、泪乃の耳の付け根に手をやった。
「………っ?」
一生懸命犬耳のアタッチメントを探す章太郎。
見つかるわけないぞ、本物だからな。
「…な、なかなか精巧に出来てるな、最近のこういうグッズは、す、素肌に直接取り付けるのか」
俺と同じ反応してやがる…
「副部長、素直に認めるのです」
「そうだぞー、るいのはわんちゃんなんだぞー!」
ひとみと田辺がここぞとばかりに章太郎を攻撃する。
まぁ、普段から章太郎にあしらわれてばかりいるこいつらにとっては
今は絶好のやり返しタイム突入と言う訳だ。
まるでタイムセール時のおばちゃん連中の如く、勢い付いて章太郎を責める。
「わんっ!」
泪乃も一声吼えた。
「しかし、常識的に考えてそんな生物が存在するなんて有り得ない」
流石姉貴に常識人と言わせる男だけあって中々認めないな。
「貴様の頭の中は相変わらずガチガチだな。何でも自分の知識の中で片付くと思うな、
貴様の知らない世界が世の中には無限に広がっているということも知れ、それもまた勉強になるぞ」
無言で姉貴の言葉を聞きながら泪乃の顔を触る章太郎。
泪乃はくすぐったそうに「くぅ~ん」とか「わふっ」とか言ってる。
「…むぅ、仕方あるまい…忌々しいがどうやらシモーナの言うとおりらしいな。
まさかこんな生物が実在するとは…いつから世の中はファンタジーな世界へと突入したんだ?」
率直な疑問だな。
だから俺も率直に答えた。
「そんなこと、俺が聞きたいね」と。
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