ふたりの彼。玩具の私
第1章 ふたりの彼。玩具の私
「ふっきれたみたいね?」
「…はぃ」
ミィナが唇を離し。そして、尋ねた。
「ヒロミさんの愛する彼が、ふたりに分裂したらどうします?」
「なになに? 分裂って? 一人が、ふたりになっちゃうってこと?」
「うん」
「そうね~… うぅーんむ… 一本が二本になって大満足♪ で、どっちかが死んでも、どっちかは残るし? どっちかが浮気しても、どっちかが… 両方浮気されたら。両方のチンチン切っちゃう! あーでも、それだと、淫乱性の私が、浮気するかな? あははははは」
「あはっ」
ミィナは底抜けに明るいヒロミに癒されて笑い。そして、もう一つ質問しようとした。
『もし、自分が分裂したら?』
でも、この質問は聞いても同じだろうと思い、心に留めた。
玄関まで送られている途中、開け放たれたドアから。彼女の仕事場。事務机でパソコンに表計算のソフトが立ち上がっているのが見え。何気に覗くと、
「今ねやっかいなソフトとにらめっこしてたの。アタシ機械オンチだから、もう頭が爆発しそうよー!」
ミィナはそう聞かされ、
「触ってもいいですか?」
ヒロミを見つめると、
「え? またぁ~ あぁ~~ん」
彼女は勘違いしていた。
「…あ。違います。あれを」
「あぁああああ…」
ミィナはヒロミが驚きを隠せないことに気づかず、パソコンの前に座ってしまい、たくさんの数字が手書きで書かれたノートを見ながら、ソフトを手際よく動かしていった。
「…得意なんだね」
「えぇ。こーいう仕事してましたから」
「…そう。でもね、あなた大変な物見てしまったわ…」
「え?」
「それ、うちの裏帳簿なの…」
ミィナは顔を蒼ざめさせていた…。
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