ふたりの彼。玩具の私
第1章 ふたりの彼。玩具の私
ユタカたちは、二つの細いリングを、それぞれに一つずつ持ち、ミィナの左手の薬指にはめ込んでいった。
「するって言ってない!」
二個のダイアモンドリングが、彼女の指でキラキラ輝いたが、それすら外そうとする手を押さえ、泣き濡れるミィナを、暖かいハグとキスで包んでいった。
「するって言ってないもん。ダメ! ダメ! ダメー! 私はあなたたちの玩具じゃない! おもちゃじゃ…」
「僕らが君のどれいなんだよ?」
「知ってるだろう?」
「アイシテル」
「アイシテル」
「アイシテル」
「アイシテル」
「アイシテル」
「アイシテル」
「アイシテル」
「アイシテル」
彼らは、これ以上ない言葉を、繰り返し囁き続けた…。
『それ以上言わないで。それ以上… コワレテシマウカラ…』
ミィナの心は揺れはじめていた…。
「アイシテル?」
「アイシテル?」
「アイシテル?」
「アイシテル?」
「僕のことアイシテル?」
「怖いんだ…」
「怖いよミィナ」
『怖いって? 怖いの? 怖かったのを押さえていたの?』
思わず息を飲んだミィナ…。
彼らは力を無くしたように泣き崩れ、嗚咽交じりに話しはじめた。
「君に僕のおとうさんは、子供の頃病死したって言ったけど。ほんとは自殺なんだ…」
「僕の見てる前で首を吊ったんだ! 学校帰りに、なんとなく工場へ遊びに行ったら…」
「その瞬間の目を今でも覚えてる…」
「鮮明に焼きついてるんだ…」
「もう少し行くのが早かったら…」
「人って簡単に死ねるんだよ…」
「死んだらおとうさんに会えるって。ずーっと、ずーっと…」
その瞬間に戻ってしまった男を、女はきつくきつく抱きしめていた。
「ねぇ。デート… 楽しみにしていたのよ。まだ時間あるわ…」
ミィナは、彼が死ぬことに対し、なぜ頓着ない態度を取っていたのか、やっと分かった気がした…。
「もう一つ贈り物があるんだ…」
「連れて行きたかったのは”ガラスの城”…」
「どこへでも行くわ」
そして、自分の心がどこに向かっているのかも知った。
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