ふたりの彼。玩具の私
第1章 ふたりの彼。玩具の私
★
人波みでごった返す、通勤ラッシュの駅。
寝ぼけまなこでボーッとしてる人。
疲れた青白い顔の男。
元気な女子高生たち。
化粧の濃いOL。
老齢なおじーさん。
雑多な人たちが乗りあう車内に、私は飛び乗り目的の駅へ向かった。
その駅に着いても、構内を出ることはなかった。約束の場所はこのホームだったからだ。
普段なら乗車する人のことなど気にはしないし、空席を見つけたら真っ先に座り。うたた寝を始めていたけど、今日は違った。
壁に背をもたれたまま、立ち並ぶ人々をじっと見ていると、行きかう男性の視線をチラチラ感じ、”視姦”という言葉が頭をよぎったとたん、ぬるっとしたものが溢れるのを感じた…。
『…違う…ずっとおかしいまま。ずっと… あれから、ずっと…』
大きめの、真っ黒いサングラスで顔を隠したまま、雲一つ無い空を見上げた。
数本の電車を見送りしばらくして、やっと目印を見つけ。その後を追った。
相手はすぐに私だと気づいたようだったけど、逆光で顔は良く見えず、奇妙な雰囲気を感じたが、聞かされていたその目印に間違いはないはず…。
いけないことをしようとしてるのに、私の心は裏腹に高鳴っていった…。
携帯で、いかがわしいサイトを見つけ。
数人の男たちと連絡を取り合い、選んだ一人が目の前にいた…。
そのまま私たちは、背後からの乗客たちに押され、反対側のドア側へ押し込まれた。
メールのやり取りで、私は自分の写真を相手に見せなかった。
[決めるのは私]
怖かった。何より怖かった。このまま堕ちて行きそうな自分に怯えていたし、相手を私なりに見極め、ダメだと思ったら会わずに帰りますと、伝えていた…。
相手からの返事はこうだった。
[構わない。じゃあ、細かい決め事をしましょう]
動きはじめた電車。良く知ってる空間が全く違う物になっていく…。
鞄に付けられていた目印。男性が持つには不釣合いで、派手な人形を握りしめた私は彼の背後から、ドア側。彼の前へと移動した。
顔を見合わせた二人…。
男は一瞬”ほんとに来やがった”とでも言うような顔をしたが、その目はすぐに豹変し、ミィナの腰を抱いていた。
少しきつい顔をしてるなと思った…。
『え!?』
ミィナの顔が曇り、第一印象で奇妙に感じていたことは、当たっていた。
『ごめん…ダメ?』
彼の目はそう言いながら、首をかしがせていた。
23
こちら↓でポチっと応援応援よろしくお願いします。にほんブログ村 ランキングへ→
▼作者にぷちカンパ大感激!