壊れたあたしに

ずっと付き添ってくれたのは

隆二さんだった。

毎日一緒にいてくれて…

臣さんを思い出して

あたしが狂いそうになる時は

何も言わずに抱きしめてくれる。

前みたいな関係じゃない。

ただ…ただ…

側にいてくれるの。

抱きしめてくれるの。

ああ…

臣さんを失って

もうどれくらいの時間が

経ったんだろう……

隆）〇〇ちゃん、

　　今日は何が食べたい？

〇）…何も…いらない……

隆）ダメだよ、ちゃんと食べないと。

〇）……

隆）ね？

優しく笑って

あたしの頭を撫でてくれる。

〇）何もいらない。

隆）ダメ。

毎日そう言って

ご飯を作ってくれる。

〇）臣さんに…会いたい……

隆）……

〇）…会い…たい…っ

隆）……

ああ…

あの人の体温を思い出すだけで

胸が焦がれて苦しくなる。

〇）臣…さん…っ

　　…うう…っ、あぁぁっっっ

会いたい。

会いたい。

抱きしめて。

臣さんがいなきゃ

あたしは生きていけない。

〇）あぁぁぁっっっ

隆）〇〇ちゃん……

またあたしを抱きしめてくれる

優しい腕……

あたしが泣き止むまで

ずっと優しく…包んでくれる。

隆）〇〇ちゃん…

〇）はぁ…っ、はぁ…っ

隆）ちゃんと前を見て…

　　幸せになろう？

〇）……

「幸せ」って…なに？

そんなことすら…もうわからない。

隆）俺が一緒にいることが

　　〇〇ちゃんにとって

　　少しでもプラスになるなら…

　　俺はずっと側にいるから。

〇）……

隆）〇〇ちゃんがまた…

　　笑えるように…なるまで…

〇）……

隆）本当は…俺が…

　　〇〇ちゃんを笑わせてあげられるような

　　そんな…存在だったら…いいのに…

〇）……

また…泣いてる。

そう…

隆二さんはいつも…

あたしが傷つくと

一緒に自分も傷ついてしまうの。

優しすぎるから…

あたしの分まで…

隆）〇〇ちゃんが…

　　また…誰かを好きになって…

　　幸せになれるように…

　　前を向いて…頑張ろう？

〇）……

隆）それが…俺じゃなくても…

　　俺は…いいから…

〇）……

隆）〇〇ちゃんが幸せになれるなら

　　俺は…それでいいから……

〇）……

綺麗な…涙……

あたしの真っ黒な心を…

優しく…癒してくれるみたいな…

〇）隆二さ…ん……

隆）……っ

〇）泣かない…で……

隆）……〇〇…ちゃん…

あたしは

隆二さんを抱きしめた。

ねぇ…隆二さん…

あたし…

あなたを愛せたら…

どんなに幸せなんだろう…

こんなにあたしを想ってくれて

あたしを守ってくれて

ああ…神様……

あたしは…

幸せになってもいいですか…？

こんなに苦しいなら

あの人の記憶を…

あたしから…消してください。

あの人に出会ったことも…

好きになったことも

壊れるくらいに愛してしまったことも

彼の笑顔も

彼の声も

彼の身体も

彼の温度も

全部…全部…

あたしの中から…消してください。

そしたらあたしは…

隆二さんを…愛せますか？