千姫の墓
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発行者:桜乃花
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2010/12/01
最終更新日:2012/10/13 14:39

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千姫の墓 第1章 江戸からの使者
江戸からの使者が帰り、二日ほど経ったあの日、姫の事をやたらと聞かれた。

父は姫の来る前に、女を知っておくべきだと、僕に話したのだ。

僕は、そんな事必要ありませんと断ったが、父は、その時ある提案をした。

僕がどれだけ大人になったのか見せて見よと言う。

そして、真剣での稽古を申しつけられたのだ。

もし僕が勝てば、さっきの女の話は無しだと、父は言った。

僕は、緊張したが、もう六年もの間、霧丸と積んできた稽古の成果が見せられる気がして、少しだけ嬉しかった。

しかし、幾度も実戦の中をくぐり抜けて来た武将に、かなうわけはなかった。

父は道場に行くぞと言って僕を誘い、廊下を歩き始めた。

父の刀も、僕が持っていたから、完全に油断していた。

道場までの道筋を歩く間、僕は、一度だって、父が斬りつけ来るなんて疑いもしなかった。

僕が道場の扉に手をかけた瞬間、父の懐刀が僕の首に当てられた。


「真剣勝負を望む相手に背を向けてはならん。まだまだお前は子供だ。親の言う事を聞くんだ。分かったな」

父は、自分の刀を腰に戻すと、勝負は終わりだと、天守の方に歩いて行った。

僕は、間抜けな若侍を演じただけだった。

父はたぶん初めから、こうするつもりだったんだと思う。

僕を負かして、言う事を聞かす。そして、くノ一を差し向ける。

僕の体は、初めから僕だけのものじゃなかったから。

豊臣家のものであり、父のものだった。

そして、僕が死に瀕することは、影である霧丸が死ぬ事だと知った。

だから、こんなことくらい、何でもないさ。

そう思おうとしたが、だめだった。

今朝の、霧丸の態度の謎が解けてしまったのだ。

分からなくとも良いことは、すんなりと頭の中に入り込む。

もう後には戻れないけれど、僕は霧丸を失いたくない。

きれいに整えられた着物を着て、僕は天井を見ている。

そこには、今は霧丸がいる。

僕には良い答えにつながりそうな、どんな考えも浮かばない。

けれど、涙だけは溢れて来た。

なんと幼く弱い心か。

僕は霧丸の為に、生き抜くと決めたのに。


僕はいつの間にか、また眠った。

それから時が経って、目が覚めたとき、僕は目を開けるのが怖かった。

しかし、鼻先に花の香りがして、僕は素直に目を開ける事が出来た。
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