千姫の墓
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発行者:桜乃花
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2010/12/01
最終更新日:2012/10/13 14:39

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千姫の墓 第1章 江戸からの使者
今日のうち、すべて済ますつもりだった。

しかし、もし、くさびが掟を破ったのなら、その記憶も、消しておいた方がいい。

確かめなくては、私は、そう考えて、笛を吹いた。

くさびはすぐに現れ、私の背について、じっとしていた。

「お前は、掟を破ったのか?ここにいると、若殿様に教えたのか?」

「…」

くさびは答えなかった。

私は、それが答えだと判断し、自分の考えの通りに、若様の記憶にも関わる事を覚悟した。

しかし、くさびは、そのままにしておいてくれと言った。

責任は、頭領の雷鬼がとる。

だから、託された、勤めを果たせと。

なぜ重い罪をゆるされたのか、霧丸自身が不思議に思っていたが、まだその真相は、予想する事さえ出来なかったのだ。

私は、納得出来なかった。

しかし、これ以上くさびの顔を見ていたら、逃げ出しそうだった。

だがら、勤めを果たす為、階下に降りたのだ。

若殿は、真っ直ぐな心を持った少年だった。

心に触れるだけで、初めから、彼が大阪を愛し、守りぬく覚悟を持っていると分かった。

私は、そんな若殿様に、女と言うものを教える。



若殿様は、最後にか細い声をあげて、私の体を知った。


私は、深く傷ついたが、どうしてか、この少年よりもずっとましだと思えた。

気を失った若殿様の着物を整えているとき、くさびの気配が遠のいた。


天井板の上に戻ると、あけびの花が一輪置いてあった。

あけびの花には、とても尊い意味があった。

私は、しばらく眺めてから懐紙に挟み、帯の間に忍ばせた。

これまで育んで来た絆の他に、大切な物が一つ出来たのだった。

私は、胸の中に出来た深い傷が、この花によってふさがれていくのを感じた。

しばらくは、くさびの顔を見たくないと思っていたのに、帯の上から触れていると、会いたくてたまらなくなった。

くさびの去った方向には、きゃらの香りが漂っていたが、私はあしきびの里に帰り、青ツバメに事の子細を話さなくてはならない。

涙が浮かんだが、私がこのままここにいたら、くさびは仕事にらないと考え、日が沈んだのを見計らって、城を出た。

そして、涙も吹き飛ぶほど、全力で走った。







父と話していた事を考えた。真剣で勝負をしようと誘われた日の事だ。
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