千姫の墓
千姫の墓
アフィリエイトOK
発行者:桜乃花
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:恋愛

公開開始日:2010/12/01
最終更新日:2012/10/13 14:39

アフィリエイトする
マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
千姫の墓 第1章 江戸からの使者
いつか知らなければならない事。

それを知る時が来たにすぎないのだ。

つらい答えだとしても、受け止めるしかない。

信じた道の上にいられるだけで、すでに幸せなのだから。

弟子達の顔を思いながらわたしは、この心を開かさず生きようと決めた。

弟子との間にも、高台院様との間にも、えにしがあるなら、どちらも尊く、汚してはならない大切なものだ。

わたしには、宝がある変わりに、苦しみがある。

そう考えれば、苦しみにも、価値があると思えた。








わたしのいる見城寺は、捨てられた子供の受け皿となっていて、僧であるわたしにも、弟弟子がたくさんある。

彼らは、兄弟子を慕い、尊敬している。

その事もわたしを引き止めた。

だからわたしは、彼らの元へ帰り、僧として生きると、いつも決意をする。

しかし、稽古に通ってくる高台院様の顔をみるなり、また迷いの中に引きずり込まれるのだ。

こんなに弱い心で、僧として生きようなんて、本当に愚かな事だと分かっている。


しかし、自分を罪人とし、おとしめれば、親も、わたしと関わって来た人も、おとしめる事になる。

わたしはそれだけは嫌だった。

わたしと関わった人達をおとしめる事なんか、わたしには出来ない。

ずっと闇の中で暮らすかわりに、わたしには何が出来るだろう。

救われるとは思わなかったが、わたしは住職の勧める修行に入ってみようと思う。

何かがかわるかも知れない。

修行とは、そう言うものだからだ。

わたしは、未熟な僧だが、心から御仏のお力を信じていた。

この修行によって少しでも強く、賢い僧になれたらいい。

そしていつか、光の中に高台院様を導く事ができたなら、わたしは報われる。

淀城から帰ったわたしは、闇の行に入る決意を、住職に話したのだった。






住職からは、何の返事もないまま数日が過ぎた。

そして今日も、茶の湯の弟子達が見城寺の茶室を訪れる。

ここには、たくさんの茶室がある。

庵もいくつかあるし、たくさんの弟子達の為に、高床の蔵を一つ使わせてもらっている。

今日来る弟子達は、商家の主人や、娘さんが幾人か、それと、他の寺から来る僧主のお供の小僧様。

まだ茶の湯を始めたばかりの、方々だ。

15
最初 前へ 12131415161718 次へ 最後
ページへ 
ページの先頭へ