千姫の墓
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発行者:桜乃花
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ジャンル:恋愛

公開開始日:2010/12/01
最終更新日:2012/10/13 14:39

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千姫の墓 第1章 江戸からの使者
僧正は、ずいぶん前に、妹様の顔を見に行って、茶室にはいなかった。

もし、ここにいたら、高台院様を弟子にする事には、強く反対したろう。

私は、そう感じていたのに、断る事が出来なかった。

こうして、高台院様は、わたしの弟子となったのだ。






あれから、二十年が過ぎても、私の苦しみは、和水はしなかった。

実像を得てからの悩みや苦しみは強く、わたしは、これが修行と言うものか、と納得せざるを得なかった。

今わたしは、どうしたいのか、はっきり分かる。

出会った頃は、母親への思慕に似ていた感情が、今は恋心へと育ってしまったのだ。

わたしは、この事を、誰にも打ち明けてはいない。

わたしが決めるべき事だからだ。

罰を背負い、還俗したとして、高台院様に同じ罰を負わせるのか。

わたしには、それは出来ない。

それに、わたしを慕うたくさんの弟子の行く末を思うと、軽々しい逃れの道を選ぶわけにはいかなかった。

そして今新たな問題の中にわたしはいた。

わたしは、心を縛り付けておくため、自分を厳しく律して来た。

それは、誰の目にも、真剣で厳しい修行の日々に映った。

だから、誰もがわたしを評価し、わたしの僧としての人生は、一つの実をむすぼうとしていた。

僧としての上位。

僧正になるための修行を、見城寺の僧正にすすめられていた。

わたしは、御仏を裏切っている。

だが、その事は誰も知らない。


わたしは、僧として生きるべきか、還俗して、もう一度、人生を一からはじめるのか、選ばねばならない。




そしてもう一つ、わたしの心の中には、解決しなくてはならない問題があった。

みつるが、登城を再開したら、一度大師を訪ねてみようと思う。

ずっと心にかかっていた事、それを聞く勇気が、やっと出たのだ。

どうして、才能の上であるみつる様に、代をゆずらなかったのか。

わたしは、肩の荷を少しの間置くための、石だったのか?

本当に、大切に育てられたのは、はたしてどちらなのか。

まるで、虫けらのようにいじけた質問だが、二つの道のうち、どちらかを選ばなくてはならないわたしには、とても大事な事だった。

わたしには、茶の湯の才が有るのか。

師は、本当にわたしを認めてくれていたのか。

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