千姫の墓
千姫の墓
アフィリエイトOK
発行者:桜乃花
価格:章別決済
章別決済は特定の章でのみ課金が発生いたします。
無料の章は自由にお読みいただけます。

ジャンル:恋愛

公開開始日:2010/12/01
最終更新日:2012/10/13 14:39

アフィリエイトする
マイライブラリ
マイライブラリに追加すると更新情報の通知など細かな設定ができ、読みやすくなります。
章一覧へ(章別決済)
千姫の墓 第1章 江戸からの使者
2 松の宮

江戸から来た使者の名は、松本伊左右衛門という。

家康との縁を持ちながら、面には出たことがない。

代々、そう言う仕事を任されて来た家柄だ。

一歩間違えば、自分も、千姫も、危険にさらされる。

江戸も大阪も、千姫を利用する事だけを考えるであろうから。

私は、この夏千姫の介添えとして、大阪へ下る。

大殿は、大阪を侮っているが、千姫様の行く手は、決して平坦には見えなかった。

私には、大阪が、息絶えたようには見えなかったからだ。

これから先、細かくて、難しい問題が山積している。

しかし、私はどんな事があっても勤める気でいた。







私には、妻とは別に心に思う女子があった。

遣いの役を終えた今、その人に会いたいがため、帰りの道を急いでいる。

妻の顔は浮かんでは消えるのに、ちか様の顔は決して消える事はない。

ちかは、手の届かない相手だ。

私とは身分が違う。

しかし、ちか様はもう私の心に住んでいた。


もともと同じ師に茶道を習う弟子同士だった。


それが、どうしてこんな気持ちになったのか、自分でも分からない。

ただ放っておけず、大阪へ下る事を志願してしまった。

だから妻が泣くのは、至極自然な事かもしれぬ。

ちか様の、娘子を守りたいが為に、命がけの大阪行きを志願したのだから。

ちか様は、大殿の遠縁にあたる。

だから、千姫様は、厳密には、大殿様の孫娘ではない。

しかし、敢えて孫娘を遣わすと書いた手紙をやったのだった。

一見脅しが通じたかに見えるが、秀吉の目は、死んではいなかった。

私は、きれいな仕事ばかりをして来た訳ではないから、本当に追い詰められた者の目の色を知っている。

だから、秀吉の弱気な態度が、本物ではないことが分かるのだ。

心してかからなければ、大変な事になる、そんな予感を持ちながら、旅を急いだ。

ちかの事を思いながら。









秀頼とその共が大阪城に帰った後、松善と淀君は、しばらく話をした。

「みつるが里下がりの間は、わたくしが代役をと仰せつかりましたが、人のあなというのは、その人でなくてはうまらぬもの、もう少しお待ち下さい。大師の容態は、すぐ持ち直しましょうから」

「そうか、そうだったのか」

11
最初 前へ 891011121314 次へ 最後
ページへ 
ページの先頭へ