タイはトロリと甘いマンゴーの味第2話:バツイチ黒豹は飢えていた(無修正版)
第14章 黒豹が豹変した
男と二人きりになり、どうすればいいか分からなくなったらしい黒ヒョウは、モップで部屋の大掃除をやり出し、いつまでも終わらない。
そろそろ止めてやらないと可哀想だ。
「オン、掃除はもういいから、こっちおいで」
ホッとしたように掃除の手を止めたオンが、モップを持ったまま聞く。
「何するの」
「ここに座って」
「座って何するの」
「話をしよう」
「あなた、軽い男じゃないと言ったでショ」
そう来たか。
訪問許可を取りつけた日の、「俺はそんなに軽い男じゃない」という、苦しまぎれのセリフをよく覚えていたものだ。やはりこれが女心というものか。
電話番号を聞き出すときもそうだったが、私はハスッパな女じゃないということを、どこまでも強調したいらしい。
だがここが最後の関門だ。ヘタに答えると口頭試問に落ちて、黒ヒョウはまた大掃除を再開するだろう。モップを持ったままなのが、その証拠だ。
そうなると、スゴスゴと帰るしかない。今日の収穫は、留守番のときに盗み見た黒ヒョウの持ち物と、片付けのときに、背中でチラリと見せられた腰の物だけとなる。
ここまで来てそれだけで帰るのでは、ヘビの生なんとかだ。ここは答えどころだ。
「オンには本気になったから」(これでどうだ!?)
「本気なの?」
「そうだよ」
ここで、パチンとスイッチが入ったようだ。黒ヒョウが文字通り豹変した。
これまでは、借りてきたネコのようにおとなしかったのが、本物の黒ヒョウになった。
モップを投げ捨て、
「本気なら〇〇しろ」
いきなり命令してきたのだ。
その命令はお安いご用で、パッパッと数秒で出来ることではあるが、これまでにこんな場面で女の方から言われたことはなかったので、驚いた。
いよいよ黒ヒョウが本性を表したのだ。このあとは、餓えたバツイチ黒ヒョウの独壇場となる。
黒ヒョウ狩りに来たつもりが、私は返り討ちに会ってしまうのだ。
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