タイはトロリと甘いマンゴーの味第2話:バツイチ黒豹は飢えていた(無修正版)
第12章 黒豹の部屋で鍋を囲む
オンの部屋で一人待つうち、オンとメイのしゃべり声が聞こえたかと思うと、カチャリとドアが開き、買い物袋をぶら下げた二人が賑やかに帰ってきた。
ひっきりなしにおしゃべりをしながら、どこからか大きな電気鍋を取り出してきて、居間の真ん中に置く。
台所で何かやっていたかと思うと、切った野菜や肉や魚を持ってきて、湯気の立ってきた鍋にどんどん放り込む。
どうやら鍋料理のようだが、沸騰する前に具を入れて、自然に煮えるのを待つところはタイ式のようだ。
味は、ビンに入ったトロリとした甘辛いタレをめいめいの皿に入れて、鍋の具をつけて食べる。
いわばタイ風のしゃぶしゃぶ料理だ。
オンとメイはタレに生唐辛子の輪切りを入れて、さらに辛くして食べている。
「あなたもどう」
と小皿に入った輪切りを勧められたが、タレ自体がすでにピリピリ辛かったので、断った。
ご飯だけは電気釜で炊いてあったようで、タイ米の冷飯を一緒に食べる。
熱い鍋料理に冷たいビールがうまい。
3人で飲むので、あっという間にビールの空き瓶が並んだ。
メイはおしゃべり好きで、目をくるくるさせながらしゃべリ出すと、なかなか止まらない。
オンはどちらかと言うと物静かなタイプなので、メイのような正反対のタイプと馬が合うのだろうか。
メイはアルコールが入って気分をよくしたのか、ますますおしゃべりにエンジンがかかってきたようだ。
「この部屋ねえ~、いつもはグチャグチャなのよ~」
「でもあなたの電話があったから~、オンがさっき、大あわてで片づけたのよ~」
道理で、いやに部屋がガランとしていると思ったが、そういうことだったのか、ククク。
黒ヒョウ無言で、否定も肯定もせず・・・
だが内心では、
(こいつ、あとで首シメてやろう)
と思っているに違いない。
3人で鍋と囲んで、よく食べ、よく飲み、よくしゃべり(メイだけだが)、鍋が空になったときは、腹が満杯になっていた。
さーて、これで手順の1段階をクリヤしたぞ。
次はメイに帰ってもらう段階だが、相変わらずしゃべっていて、帰る気配はない。
下手に話し相手をすると、ますます止まらなくなるだろうから、聞いて聞かぬフリを決め込むことにした。
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