タイはトロリと甘いマンゴーの味第2話:バツイチ黒豹は飢えていた(無修正版)
第8章 黒豹の部屋に入れてもらう
近くで見る黒豹オンはいつものステージ衣装とは違って、ジーンズにTシャツの小ざっぱりした格好だった。
長い髪を後ろで大ざっぱに束ねて、全体に店とは違う印象だが、引き締まった体の輪郭は同じだ。
ぴったりしたジーンズが、出っぱった部分も引っ込んだ部分も、輪郭の線をはっきり見せつけている。
女の部分に突き刺さるような私の視線を目ざとく感じて、
「あれがあたしのマンション」
オンの指先で無理やり視線を変えられたその先に、白っぽい中層マンションが見えた。
タイのマンションはピンからキリまであり、ガードマンが入り口で24時間目を光らせている高級マンションもあれば、出入り自由の一般マンションもある。
オンのマンションはエアコンなしで家賃が安いと言っていたから、一般マンションでもさらに下のクラスだ。
並んで歩きながら、
「今友だちが来てるから、晩ごはん一緒に作って食べよう」
ええー、友だちなんて聞いてねえよ。
そんな邪魔者がいたら、言いたいことも言えないし、したいことも出来ないし。
もしかして、まだまだ本気度の試験は終わってないのか。友だちに恐れをなして、帰るなら帰れっていうことか。
それとも最初から、文字通り「部屋に来るだけ」だから、飯食ったら帰れという意味か。
やれやれ、一難去ってまた一難か。女の攻略は難しいものだ。
オンのマンションは、聞いていた通りの安賃貸マンションだった。
ガードマンはいないので、誰でも出入り自由だ。
エレベーターを降りると、通路は雑然としていて、タイの習慣なのか、靴やサンダルがバラバラに、部屋の前に脱ぎ散らかしてある。
オンの部屋は、入ったところが、だだっ広い部屋になっていた。
広い部屋の中にダブルベッドがドンと置いてあり、地味な布団が敷いてある。あとはスカスカの、質素な生活ぶりだ。
奥に台所とトイレらしい部屋が見える。いわゆるワンルーム・マンションだ。今ではスタジオタイプと言うらしいが。
日本のワンルームと違うのは、部屋が広いこと。
日本だったら2部屋にするだろうスペースを、だだっ広い1部屋にしてある。さすが大陸のタイは、住環境も太っ腹だ。
広い部屋で女の子が一人、テレビを見ながら待っていた。
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