タイはトロリと甘いマンゴーの味第2話:バツイチ黒豹は飢えていた(無修正版)
第5章 黒豹の部屋に行きたい
電話番号を聞き出して、さらに一人暮らしまで聞き出したら、次にやることは決まっている。
店で、
「休みの日に部屋に行ってもいい?」
と聞いてみた。
今度も電話番号のときと同様に、理由を聞かれるかと身構えたが、オンの返事はあっけなく、
「おいでよ!」
だった。
ええっ、こんなに簡単にOKしていいのか?
今度はこっちがどぎまぎする番だ。すっかりうろたえて、
「言っとくけど、遊びにいくだけだから」
聞かれてもいない弁解をはじめていた。
「誤解するなよ」
「俺はそんなに軽い男じゃないから」
さすがにこれには笑われたが、次の休みの日を聞き、しっかり約束を取り付けた。
さてその日が来て、体をすみずみまで清め、オンの部屋に向かう。
場所はまったく知らないのだが、ケータイで聞きながら行けば、なんとかなるだろう。
電車の駅名は聞いていたので、まず電車に乗った。
バンコク市内を縦横に走る高架電車だ。
地下鉄と組み合わせれば、バンコクのたいていの場所には行けるようになっている。
電車は中心部に向かうので、混んでいた。混んだままバンコク中心部のサヤーム駅まで行き、別の路線に乗り換える。
やって来た電車はバンコクの周辺部に向かうので、スカスカだった。
繁華街を通りぬけ、チャオプラヤー川の広大な茶色の流れを一気に渡る。
聞いていた見知らぬ駅で電車を降りた。勝手がわからずウロウロ歩いていると、地元の客にどんどん追いぬかれる。
ウロウロしながら出口を探すと、この駅には出口が4つあるようだ。
全然違う方に出てもよくないので、オンに電話で聞くと、どの出口でもいいという。
日本的な感覚では一番近い出口を教えてくれるはずだが、ここはタイだ。
どこから出ても、(時間はかかるだろうが)いつかは必ず行けるのだから、そんなに細かいことは気にしないらしい。
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