タイはトロリと甘いマンゴーの味第1話:はじめての女は短髪ノイ(無修正版)
第6章 私服のノイに驚く
ウエイトレスを呼び、連れ出し料と、それまでのドリンク代を勘定してもらった。
支払いを見届けると、ノイは
「着替えてくるから待っててね。すぐだから」
例のマイクロスカートをひるがえし、奥の控室の方に消えた。
きれいな女性と二人だけの時間が持てるという期待感の反面で、はじめての外国人女性とのデートはうまく行くだろうかという、一抹の不安もある。
その不安を断ち切るかのように、目の前に、さっきの勘定のお釣りが突き出された。
タイでは、とくに夜遊びの店では釣り銭をごまかされることがあると聞いていたので、長方形の皿に乗っている釣り銭を確かめる。
問題なかったので、ウエイトレスにいくばくかのチップを残して、残りの札はポケットに入れる。今日の大事な軍資金だ。
そうしているうちに、私服に着替えたノイがやってた。
えっ?これがノイ?
さっきまでとはうって変わって、地味なワンピースだ。化粧も控えめで、ハンドバッグを手にした姿は、その辺の娘さんと少しも変わらない。
タイの女はパンストなんかはかないので、素足にサンダルだ。
さっきまでのは仕事用の仮の姿で、これがノイ本来の姿なのか?
今日はノイのイメージに、何回うっちゃりを食らうのか。すっかり翻弄されている。
店を出て、普通の娘さんにしか見えないノイと連れ立って、繁華街を歩くのは気が引けるなあとドキマギしていると、追い打ちをかけるかのように、ノイの方から腕を組んでくる。
ええっ?こんなことまでしてくれるのか。
もう気が引けるとか言ってる段階ではない。
気が引けるどころか気恥ずかしいが、もう、まな板の上の鯉だ。こうなったら、なるようになれと、腹をくくるしかない。
ソイ・カウボーイの雑踏の中に足を踏み出した。
だが足が地についていない。
通りの両側で客引きをしてる大勢の子たちの視線を浴びながら、二人三脚のような足取りで、ソイ・カウボーイのネオンの底を通りぬける。
足がもつれて、ノイのサンダルの小さな素足を踏まないよう、そればかりが気がかりだった。
腕を組んだまま、ノイが
「どこに行くの?」
見上げるようにして聞いてくる。
ここで単刀直入に
「マイホテル」
と答えても、素直に付いてくる様子だったが、それではあまりにも味気ない。
(結局あなたも他の男と同じなのね。あたしのカダラ目的なんでしょ)
と見透かされ、さげすまれるだろう。それだけは避けたかった。
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